【相模原・障害者施設殺傷事件に学ぶ】知らず知らずに「弱者を馬鹿にする」考え方とは?

立石美津子の子育てアドバイス【番外編】

2016年07月28日  公開

   立石美津子の子育てアドバイス 子育てコラム


障害者施設で19人の入所者が殺されました。犯人は「障害者は人の形をしているだけで人間ではない」「障害者に使っている税金は無駄。これをなくして世界にお金が回るように障害者は死んでくれた方がいい。そのほうが家族は楽だ」と言っているそうです。

『1人でできる子になる テキトー母さん流 子育てのコツ』の著者の立石美津子がこの残虐な事件を起こした犯人の性格形成の原因についてお話しします。

「弱者を馬鹿にする」考え

犯人は生まれつき、そんな考えを持っていたのではありません。人として生まれ、その親から育てられ、様々な教育を受ける間にゆがんだ価値観が植えつけられました。

こんなことを耳にしたことがあります。

健常児を持つ保護者がクラスに障害児がいることを知って「うちの子に迷惑がかかる。だから、そういう子をクラスに入れないでほしい」と学校側に要求してきたそうです。

実際、障害児はクラスの中で足手まといになることは事実かもしれません。

担任の手がそちらにとられる、授業を妨害されるなどの迷惑をこうむることもあります。けれども、健常の子ども達も「世の中には色んな人が存在するんだ」ということを机上の空論ではなく学ぶことができる良い面もあります。

障害児本人にとっては、健常者から良い刺激をたくさん受けることもありますが、自分が最下位でいて自己否定したり苛めを受けることもあります。だから、常に一緒にいることが両者にとって良い環境ではないことも多々あります。

でも、絶対排除という姿勢や存在そのものを全否定する言動を親が子どもの前でしていると、少なくとも今回の犯人と同じ考え方の種を植え付けてしまうのではないでしょうか。

また、わが子を褒めようとして、出来ていない友達と比較して「あの子は努力しなかったから○○になったのね。その点あなたは頑張っているから○○できたね」の褒め方も“弱者を馬鹿にする考え”がついてしまいます。

人間は全員が健常者として生まれる訳ではない

筆者が特別支援学校の教員免許をとるとき、授業でこんな話を教授から聞いたことがあります。

<鉢植えに100個の種をまいたら全部が成長はしない。種のまま芽が出ないもの、途中から成長しないもの、曲がってしまうものがある。そんな種の犠牲の上に成長できる芽がある。人間も生物だから同じこと。全員が健常者として生まれ成長するわけではない。

だから、税金をそんな人たちのために使い、健常者は手を差し伸べなくてはならない。特別支援の教員免許を取ろうとしている貴方たちは、その使命を担っている。>

茨城県教育委員の長谷川氏の「障がい児排除発言」も同じ

2015年11月、茨城県教育委員の長谷川智恵子氏の「障がい児を出生前診断などの技術を使って早めに見つけて減らせる方向に持っていけないか」といった主旨の発言をし批判を浴びました。

「妊娠初期にもっと障害の有無がわかるようにできないんでしょうか。4ヶ月以降になると堕胎できないですから」

「ものすごい人数の方が障害者施設に従事している。県としてもあれは大変な予算だろうと思った」

「意識改革しないと。生まれてきてからでは本当に大変です」

「茨城県はそういうことを減らしていける方向になったらいいなと」

(2015年11月19日付の毎日新聞記事からの引用)

そして、これに対して知事もこの発言を容認しました。 これも「今回の犯人と考え方の根本は似ている」と筆者は感じました。


いかがでしたか。

新型出生前診断でダウン症児だとわかると90%の妊婦が中絶する現実があります。

けれども、この検査でわかる障害は染色体異常・二分脊椎・特定の遺伝性疾患などの一部の障害です。視覚障害や聴覚障害や人口の6%~10%を占める自閉症などの発達障害はわかりません。

更に出産時の事故で脳性まひになることもあれば、普通に問題なく生まれてきても交通事故にあったり、病気をして脳にダメージを受けて障害児になる可能性もあります。

そんなとき「あなたの子どもの存在は大変な税金がかかり迷惑をかけている。最初から生まれていなければよかった」といった発言をされたら、どのように感じるでしょうか?

また、親自身が事故や病気、鬱病や統合失調症などの精神疾患にかかり障害者になる可能性もあります。

今回の事件を“異常な人がやったこと”で済まして、障害者を“自分とは関係のない人”としないでほしいと思います。

 妊活&新米ママのための育児バイブル「ItMama」より転載


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立石美津子(たていし みつこ)

1961年大阪市生まれ。聖心女子大学卒。幼稚園・小学校・特別支援学校教諭免許を取得後、石井勲氏の元、幼稚園・保育園に漢字教育を普及する。平成7年、株式会社パワーキッズ(教室名 エンピツらんど)を創業し幼児教室を主宰。現在は作家、講演家として活動。自閉症児の母。著書は『小学校に入る前に親がやってはいけない115のこと』『読み書き算数ができる子にするために親がやってはいけない104のこと』『心と頭がすくすく育つ読み聞かせ』『はずれ先生にあたったとき読む本』『一人でできる子が育つ テキトーかあさんのすすめ』『〈マンガとQ&Aで楽しくわかる〉1人でできる子になる 「テキトー母さん」流 子育てのコツ』など。