自分を「テキトー母さんだ」という人に限って、実はテキトー母さんではない
立石美津子の子育てアドバイス vol.20
2017年11月5日 公開
私は “テキトー母さんのすすめ”という本を書いたのですが、このタイトルを見て「私もテキトー母さんだから」と言うママに多く出会いました。でも、そう言う人に限ってキッチリカッキリしている真面目で一生懸命なママなのです。どうしてなのでしょうか?
何故、そうでもないのに「自分はテキトーだから」と言ってしまうのでしょうか。
今日は『1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ』の著者の立石美津子がお話します。
何故、そうでもないのに「私ってテキトーだから」の嘘を口走ってしまうのか?
人には「周りから認めてもらいたい」「注目してもらいたい」という承認欲求があります。
心理学者、アブラハム・マズローが、人間の欲求を5階層に分けました。
- ❶生理的欲求
- ❷安全・安定の欲求
- ❸所属と愛の欲求(社会的欲求)
- ❹承認の欲求(尊厳欲求)
- ❸子どもを支配する親。自分の思い通り行動しないとイラつく、何とかしてコントロールしようとする。
- ❺自己実現の欲求
その中に“尊厳欲求(承認欲求)”というものがあります。人に見せる写真“インスタ映え”なんていう言葉が出てきたのも、その表れかもしれません。
また、SNSに載っている「この店に並んで食べました」「ディズニーランドに行きました」の幸せ自慢や、反対に自分の失敗を載せる自虐ネタも、「こんな自分に注目してもらいたい」という心理が働いているのですね。
更に他人から「自分はこれこれこういう風に見られたい」という欲求が起こります。
「実は一生懸命子育てしている、けれども、もっと手抜きできる“大雑把な肝っ玉母さん”“テキトー母さん”として周りからは見られたい」という気持ちが心の奥底にあります。つまり、自分には不足している部分で憧れのようなものですね。
あるある、こんなこと
似たような例は他にもあります。
【〇〇に見られたい言動】
- 「私ってサバサバしているから」と言いながら、ちっともサバサバしていない。却ってネチッコかったりする。
- 「私って男みたいな性格だから」と言いながら、女そのもの
- 「私ってネクラだから」と言う。でも、それを他人に言えるのは本当のネクラではない。*ネクラ=根が暗い人(もう、死語?)
【自慢気な人と思われないように、取り合えず遜る】
- 「私の家、散らかっているので」と言う。でも、お邪魔してみると結構片付いている。
- 「綺麗ですね。お肌のお手入れは何をしているんですか?」と質問すると「何もしていないですよ」と嘘を言う。
- 「スリムですね。どんなことしているんですか?」と質問すると「良く寝て、良く食べることかな」と笑う。
「自分はこうでありたい」という願望が、このような言葉を言わせているのかもしれません。
講演会に来る人
私はお題“テキトー母さんのすすめ”で幼稚園や保育園に講演者として呼ばれることが多いです。
しかし!参加者の面々を見ていると、講演会に来る人は、ほぼ100%“テキトー母さん”ではない人達なのです。
「私の子育てこれでいいんだろうか?」の不安を持っている人、心配性な人、それから完璧主義な人。
なぜなら、そもそも、‟本当にテキトーな人”っていうのは講演会に来ないですから…。
そして、冒頭に「今日、参加されている皆さんはテキトー母さんには程遠い人ですね。そうでなければ、わざわざ講演会に来ないでしょ」と話をすると…図星なのか、ここで必ず笑いが起こります。
「自分はテキトー母さんだから」と自負していても、実際、そうでもない人達が案外多いのです。
反対に「本当にいい加減な人」は講演会に参加したり、子育て関連の書籍を読んだりはしません。実際、講演会後に主催した幼稚園園長がよく次のように嘆いておられます。
「教育講演会をするといつも決まった教育熱心な保護者ばかり参加する。来てほしい人は来ない…」と
まとめ
願望もさることながら、日本には「厚かましい人と思われたくない」という“謙遜の美徳”があるので、出来ているのに出来ていないように他人に話すことがあります。
「肌綺麗ですね」と褒められても「そんなことないですよ」ととっさに反応したり、「きちんとしていらっしゃいますね」と言われても「いえいえ、テキトーなんです」と答えたり…
でも、そうではないと分かったとき「この人、素直じゃないな」と思われることもありますので、あまり違うことを言わないほうが良いかもしれませんね。
それから!
©あべゆみこ
わが子のことを他人から「お子さん良い子ですね」とか「お子さんきちんとしていますね」と褒められたとき、「いえいえ、そんなことないです。家では我儘放題です」とか「家ではだらしがないです」と言わないこと。
子どもは“謙遜の美徳の文化”がわかりませんから、親の言葉を字面通り受け取り、他人の前でけなされて、自己否定するようになってしまうからです。
「ありがとうございます。良い子なんですよ」と親バカと思われてもいいので、言ってあげましょう。
親は子どもの幸せを願って育てます。子どもも幸せになるためこの世に生まれてきました。子育てはしんどく辛いこともありますが、ちょっと振り返ってみてくださいね。
立石美津子(たていし みつこ)
子育て本著者、講演家。聖心女子大卒。幼稚園・小学校・特別支援学校教諭免許を取得後20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。自閉症児の母。著書は『1人でできる子になる テキトー母さん流 子育てのコツ』『はずれ先生にあたったとき読む本』『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』など多数