「お化けがくるよ~鬼が来るよ~」の叱り方ってどうなの

立石美津子の子育てアドバイス vol.17

2017年08月7日  公開

   立石美津子の子育てアドバイス 子育てコラム


「早く寝なさい!」と叱っても、遊びに夢中でなかなか寝ようとしないわが子。そんなときつい「早く寝ないとお化けがくるよ~」なんて言っていませんか?
“鬼アプリ”もあるようですが、子どもの躾をするとき「脅す」のは良い方法なのでしょうか。

そこで、『1人でできる子になる テキトー母さん流 子育てのコツ』の著者の立石美津子が“脅す躾”についてお話します。

理由付けが必要ないケース

子どもへの躾は犬猫への躾と同じ

犬や猫に躾をするとき「これこれこうだから、こうしないとダメだよね」といちいち説明しません。「お座り!」「待て!」「伏せ!」など指示命令だけをします。

人間の子どもは犬や猫とは違いますが、まだまだ人生経験の短い子です。くどくど理由を説明しても伝わらないこともたくさんあります。更に理由を付けられない社会のルールと言うものもあります。

ですから、子どもがご飯を立ち歩きながら食べたとき「食事というものは食卓に座って食べるものですよ。何故なら…」と話をしないで、「座りなさい!」と指示命令を出すことも必要ですね。

くどくど説明した私の失敗談

 私(先生)「○○君、授業中は帽子を脱いでね」

 子ども「どうして帽子をとらないとダメなの?」

 私(先生)「だって、ここはお部屋の中だし、太陽も照っていないでしょ」

 子ども「でも、俺は部屋の中では帽子を被っていたいんだ。俺の自由だ」

 私(先生)「でも、室内では帽子をとるのがマナーよ」

 子ども「誰が決めたルールなんだ?」

 私(先生)「……」

それ以上何も言えなくなってしまいました。なんでもかんでも説明していたので、先生として甘く見られていたのでしょう。

最初から「先生の言ったことに従わないのならば授業は受けられません」くらいの毅然とした態度をしていればよかったと反省しました。

理由付けすることも大切ですが、子どもに躾をするときは“ならぬものはならぬ”の精神も大人側には必要なのかもしれません。

理由を説明した方がいいケース

スーパーに行くと子どもにとって興味のあるものがたくさんあります。買いもしないのにほうれん草を触ったり、バナナをいじったり、鶏肉パックのラップ部分をブスブスと指で突いたりします。

こんなとき「コラ!」「ダメ!」だけだと、これに条件反射するだけで親が見ていないところでまた同じことをやったりします。

また、「お店の人に怒られちゃうよ」の注意の仕方だと、子どもは「お店の人にばれなければよい」と解釈してしまいます。

©あべゆみこ

こんなときは「売り物はまだお金を払っていないのだから○○ちゃんのものではないの。それから、もし買ってきたものに人の指跡があったら嫌でしょ。だから商品は見ているだけにしようね」とそれをしてはいけない本当の理由を話しましょう。

そうすれば、店員がいなくても、ママがその場にいなくても「してはならないこと」として鶏肉パックをブスブスと指で突くこともなくなり、更にほうれん草をちぎったり、やたら売り物を触りまくることも自然消滅していくでしょう。

本来、しつけって「あの人に叱られるから○○しないようにする等、人に従うものではなく、ルールに従うもの」ですからね!

脅しはどうなのか

ところで「脅す」躾のしかたはどうなのでしょう?

スマホのアプリで「子どもが怖がる鬼やお化けなどから電話がかかってくる」アプリがあります。親の言葉で子どもをコントロールできないとき「鬼から電話が来るよ!」と脅して言うことを聞かせるものです。

でも、恐怖におののき泣きながら従う子どもの心は?

1.本当の理由が伝わないから

子どもは「鬼が怖いから」という理由で言うことを聞いているだけで、叱られている本当の理由は理解していません。つまり、鬼がいなければ「それはやってもいいこと」と誤解してしまうのです。

2.怖い思いをする

“親に叱られて悲しい、辛い”という経験は必要です。けれども「叱られて怖い」のはどうでしょうか。
更にそこに親とは関係ない鬼やお化けが出てくるのは?

子どもがいつまでも遊んでいて寝ないときこれを使ったら?大人だって就寝前に嫌なことを考えたり怖い体験をすると実際にそれが夢に出てきます。子どもは恐ろしさのあまりに言うことを聞きますが、寝る前にそんな経験をすると夢に出てきてうなされることもあるかもしれません。

寝る前は心温まる絵本を読んでもらったり、楽しいことを考えて良い眠りにつくことが大切です。

3.やがて嘘だとバレるから

一瞬は効果テキメンです。けれども、子どもも賢いですから、いずれそれが“嘘” “脅し”とバレるときがやってきます。そうなると親の威厳は崩れ、それ以降、なかなか言葉で言っても言うことを聞いてくれなくなります。

4.ママとは違った怖い者のいうことしか聞かなくなる

本来はママの存在や言葉で躾けることが出来ないから使ってしまう、これらのツール。でも頼り過ぎると、親からの実際の言葉に従わなくなってしまいます。

子どもがなかなか寝ないときは「いつまでも起きていると朝起きられなくなる」と本当の理由を語気を強めて言いましょう。家中の電気も全て消すなど寝る環境をしっかり作ることも大切です。

その他あれこれ

お化けや鬼を出さなくても次のような言葉は避けた方がよいかもしれませんね。

  • 「言うことをきかない子は、○○ちゃんのママにもらってもらうから」
  • 「ママの言うことを聞けないんだったら、ママは出ていくよ!」
  • 「オモチャをお片付けしないんだったら、幼稚園に行っている間に全部、捨てちゃうからね」
  • 「そんなことしていたら、お巡りさんに捕まるよ」
  • 「パパが帰ってきたら、パパからも強く叱ってもらいますからね!」
  • 「幼稚園の先生に電話しておくから」

子どもに躾をするときは

1.「ならぬものはならぬ」の精神で親としての、ママ自身が少しだけ鬼になって威厳をもってビシッと躾ける。

2.変な子ども騙しの嘘を使うのではなく、一人前扱いして「なぜ、それをしてはいけないのか」もしっかりと伝える。

この二つが必要だと思います。皆さんはどうお感じになりますか?


立石美津子(たていし みつこ)

子育て本著者、講演家。聖心女子大卒。幼稚園・小学校・特別支援学校教諭免許を取得後20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。自閉症児の母。著書は『1人でできる子になる テキトー母さん流 子育てのコツ』『はずれ先生にあたったとき読む本』『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』など多数

 立石美津子オフィシャルブログ

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