発達障害を知ろう~特別支援教育の今~

葛飾区議会民進党タウンミーティング 参加レポートその1

2016年12月19日  公開

      安藤じゅん子の気づき 後援会レポート


こんにちは、安藤じゅん子後援会の凪越怜(ペンネーム)と申します。
私には、発達障害の息子がおります。発達障害についての知識習得のため発達障害についての書籍や論文などたくさん読みました。実際に、息子が通級学級に通った経験もあります。
今回は、夏の終わりに開催された、葛飾区議会民進党タウンミーティング「発達障害を知ろう~特別支援教育の今」の参加レポートを寄稿させていただきました。

葛飾区議会民進党タウンミーティング 次第
テーマ:発達障害を知ろう~特別支援教育の今~
1.開会
2.あいさつ・主旨説明 民進党東京第17区総支部長 伊藤まさき氏
3.来賓挨拶
4.講演 発達障害を知ろう
 講師:目白大学教授 小野寺敦子氏
5.情報提供 葛飾区の特別支援教育の今
 講師:葛飾区教育委員会学校教育担当部長 平沢安正氏
6.質疑応答
7.閉会

はじめに元・都議会議員で現・民進党東京第17区総支部長伊藤まさき氏より講演会主旨のお話がありました。

「葛飾区では東京都の中でも特別支援教育に力を入れている区であり、全種類の特別支援学校があります。(ろう学校や、養護学校など)葛飾区内の公立小学校全校に発達障害の子が指導が受けられるよう通級学級を3年以内に設置する予定です。
そうした背景の中でその通級学級に通うお子さんはそれぞれ事情、支援内容や状況は異なるが、最近は耳にすることの多くなった“発達障害”。大まかなお子さんの特性を知ってもらおうと発達障害についての講演を企画しました。」(伊藤氏)

来賓あいさつの後、葛飾区においての特別支援教育の取り組みの基礎知識として、発達障害とはどんなものなのか?どんな支援が必要なのか? を中心に目白大学教授 小野寺敦子氏を講師に迎え、講演が行われました。

昨今の発達障害と診断された人の増加傾向、学校教育現場の現況、学校の支援体制、発達障害の特性や支援方法などをスライド資料を参照する形式で講演がスタートしました。

講師の小野寺敦子教授は新宿区で特別支援学級・または通級教室のある小学校の巡回指導員として7年間指導を続けています。新宿区は東京都の中でも先駆けて特別支援学級・または通級教室のある小学校の巡回を行っているとのことです。

通級教室とは…普通学級に在籍を置き、発達障害や学習障害などの診断がある児童が専門知識のあるもののもとで、支援を受けながらスキルや学習方法を学ぶ学級のことです。グループで活動したり、または個人で(担当とマンツーマン)指導を受けます。

通級教室の支援や学習内容については地域や自治体によって異なるようですが、主にSTT(ソーシャルスキルトレーニング)の学習、LD(学習障害、識字障害など)は個々に合わせて学習をします。在籍の学校に特別支援教室がない児童が別の通級教室がある学校に通う形となり、保護者の送迎が必須です。

増えている発達障害。その種類と支援方法

以下は当日の資料より抜粋・引用してまとめています。

通級学級による指導を受けている児童生徒数は過去三年間で15.9%増えているとの報告がありました。(平成25年:77,882名 → 平成26年:83,750名 → 平成27年:90,270名
なぜ、発達障害の子どもたちは増えているのでしょうか?

グラフ:通級指導を受けている発達障害の児童・生徒数

増えている理由その1
診断基準が明確となった

主となる発達障害の診断基準

先天的な神経系が問題の発達障害は医療機関や専門医が発達障害の診断をする際、診断基準に基づいて診断されています。以前は主にICD-10(1993)(InternationalClassification of Diseases)を用いて診断されていました。日本公式診断名はICDに基づいており(公的な手帳や証書についてはこちらの診断が必要)、DSM-5に比べて診断基準がより厳格です。

2013年に米国精神医学会の診断基準、DSM-5(iagnostic and Statistical of Mental Disoders5th)が発表されました。(日本では「精神障害の診断と統計マニュアル」「精神疾患診断統計マニュアル」などと呼ばれています。)一部の精神疾患概念において「障害」→「症(群)」の訳語を採用しており、現在は発達障害の診断がDSM-5を用いた主流になっています。

いずれの診察・検査についても、診断基準に沿った調査や聞き取りの他に、身体の特徴(視線を合わせずらいなどの特徴)の観察、MRI(magnetic resonance imaging;磁気共鳴画像)で脳の状態の検査、生後から幼少時にかけての療育状態の聞き取りなどを含め、総合的に診断されます。併せてWISC(ウィスク)検査(児童・成人において最もよく使用する知能検査)を行う場合もあるようです。

重度から軽度、または完全には当てはまらないものの特徴を持っているなど、発達障害の診断の幅が広がりました。

受診・診断も重要ですが、それぞれ抱えている困難が人それぞれ、さまざまですので、解決策や対応策を支援してくれる医療機関と医師を選ぶことが重要です。

増えている理由その2
生後から幼少時等の療育環境

先天的な神経系の問題で発達障害と診断される場合とは別に、虐待やネグレクトなどによる養育の悪環境によって発達障害に似た特異性を持っている児童が発達障害と診断されている場合があるとの報告があります。

全国208か所の児童相談所が2015年度に対応した児童虐待の件数が、前年比1万4,329件(16.1%)増の10万3,260件です。虐待は第4の発達障害と呼ばれ、虐待を受けて育った児童は発達障害の児童と似た症状を呈することがあり、懸念されています。

ふれあうことが重要である生後から幼少時に、身体の暴力だけでなく、ネグレクト(育児放棄)などの虐待を受けた場合、発達障害と似た症状だけでなく、反応性愛着障害(Reacitve Attachment Disorder)の特徴を持つ場合が多いとされています。反応性愛着障害とは、保護者との関係の歪みに基づく子どもの行動障害で、対人関係を構築する力が未発達なために引き起こされる行動障害の1つです。

増えている理由その3
「発達障害」という言葉が注目されている

近年「発達障害」という言葉をインターネットやいろいろなメディア媒体で見かけることが多くなりました。インターネットで「発達障害」と検索するとさまざまな情報を得ることができます。検査に使われる項目も公開されています。自覚のある人自ら専門医療機関を受診したり、または身近な人が受診を勧めることもあるようです。

また、受診できる専門医療機関と診断できる医師も増えて、受診したい人の間口が広くなりました。「もしかしてそうかもしれない」から「受診してみよう」に変化している人が増えているのかもしれません。

児童であれば、保育園、幼稚園や小学校など、初めての集団生活で困難を目の当たりにし、保育士や学校担任に受診を勧められるケースもあります。また、大人になって診断されるケースも珍しくないようです。

さまざまな身分や立場の人々とコミュニケーションを取らざる得ない社会人は、困難を抱えているにも関わらず周りに理解してもらえないことが多いように思います。二次障害(ストレスを抱え鬱になるなど)になる前に自ら(または周囲の勧めで)受診することが望ましいです。

発達障害の診断分類と必要な支援

では、具体的に発達障害の診断はどのように分類されているのでしょうか?
大まかなグループとして以下のようになります。

  • 自閉症スペクトラム
  • ADHD (注意欠陥・多動性障害)
  • 学習障害(Learning Disabilities=LD)

自閉症スペクトラム

自閉症スペクトラムは大きく分けて3つの分類となります。

  • 自閉症 ASD(Autism Specturum Disoerder) → 社会性の不全
    (小児自閉症は世界的に男児が多い)
  • 広汎性発達障害 → 現在は自閉症スペクトラム症(PDD) → 社会性の不全
    • アスペルガー症候群はこちらに含まれるようになり、呼び名も自閉症スペクトラム症(PDD)に変更となっている。
    • 知的な遅延がなく、軽度の場合はうまく適応できていて、気づかないことが多い。
    • 五感敏感なことが多く、それぞれにこだわりを持つことがある。(光、色、肌触り、匂い、物に対するこだわりなど)
    • 突然の予定変更でパニックを起こす場合もある。
    • コミュニケーション力(社会性)に乏しい場合が多く、場面に相応しくない言葉を発しトラブルになることもある。
    • 全体像をつかむのが苦手で言葉そのものの意味で捉える事が多い。(冗談や嫌味が理解できないなど)
    • 不器用なことが多い(同時に2つの動作をするなど)

    ※①、②については同じグループ分類とされている。

  • 知的障害 精神遅延 → 認識全般の不全
    IQ80が通常IQの目安とされる
自閉症スペクトラム(PDD)の児童への支援方法
  • 日頃から5W1Hの思考構成を考える場面を作る→トレーニング
    (※Whenいつ Whereどこで Who誰が What何が Whyなぜ Howどのように)
    「どんな場面で誰が(誰に)何をどのようにしたらよいか?」読み書きが苦手なことや、自分の社会性スキルの向上につながる。
  • 急な変化に適応できない場合に備えて、1日の行動を視覚的に確認する。
    行事や教室の移動が伴う場合は事前に伝えておく。
  • 学校においては普段過ごすことの多い教室内をできるだけシンプルにする→きらきらするものをつるしたりしない、掲示物を少なくする、外気が影響しない座席にする(日光の光が差し込む、カーテーンが近くにある、外の様子が見えるなど)など。
  • 物を失くしたり忘れたりの防止策として、イラストの表などを用意したり(イラストがマグネットなどで着脱でき、用意したものは表内で移動するなど)視覚的に確認できる習慣を身につける。
  • 視覚優位な場合は図解やイラスト、論理有利な場合は理屈で説明する。

ADHD (注意欠陥・多動性障害)

ADHD (注意欠陥・多動性障害) → 特定の部分の不全

  • 児童の場合、集中力を通常よりも持続することが難しく、授業中に歩き回ったり、じっと座っていることができないこともある。
  • 注意力が散漫になり興味の対象も次々と変化する。
  • 物をなくしたり、忘れ物が多い。
  • 怒りのコントロールや感情のコントロールが困難。
  • 同時に2つの動作をこなすことや手先が不器用な場合が多い。
    →上記のことが原因でいじめの標的になったり、トラブルを起こしやすい。
ADHD(注意欠陥・多動性障害)の児童への支援方法
  • 学校においては普段過ごすことの多い教室内をできるだけシンプルにする→きらきらするものをつるしたりしない、掲示物を少なくする、外気が影響しない座席にする(日光の光が差し込む、カーテーンが近くにある、外の様子が見えるなど)など。
  • 物を失くしたり忘れたりの防止策として、イラストの表などを用意したり(イラストがマグネットなどで着脱でき、用意したものは表内で移動するなど)視覚的に確認できる習慣を身につける。
  • 怒りが爆発した時など、一時的に静かな別室やスペースに移動する。
  • 黒板ノートに書き写したり日常で行うことが多い作業は気長に見てあげたり、大事なところにポイントを置いて書き写すなど。

学習障害(Learning Disabilities=LD)

学習障害 →特定部分の不全
学習障害は知的な遅延がなく、読む・書くなどの1つあるいは複数の分野の理解・能力取得に困難を生じる。

ディスレクシア(読字障害)
文字を読む能力に障害があり、よく似た文字が理解できなかったり、文章を読んでいるときにどこを読んでいるかわからなくなってしまうことがある。それらに伴い頭痛がしたりする。文字のカーブや角の認識が難しいとされ、日本語においては漢字、ひらがな、カタカナで構成されている為、より複雑になる。
ディスグラフィア(書字障害)
学習障害の文字を書くことに困難を示す症状。黒板の文字を写し書きするのが難しかったり、鏡文字を書いてしまう、読点が理解できないなどがある。
ディスカリキュア
数字や計算に使用する記号などを理解・認識することが困難とされている。繰り上がりや繰り下がり、単位の認識や大小の理解困難が挙げられる。
学習障害(LD)の児童への支援方法

それぞれ苦手とされる事に重きをおいて支援する事が必要である。

  • 計算が苦手・・・言葉に出しながら手順を学ぶ。
  • 読むのが苦手・・・マーカーを利用する。窓を開けたシートや定規を使用しスライドして読む。
  • 漢字を書くのが苦手・・・補助線を入れたノートを使用するなど。
  • 九九が苦手・・・視覚的に色を変えて表を作成するなど。
  • 作文や文章を作るのが苦手  ・・・ ※5W1Hを提示する。
    (※Whenいつ Whereどこで Who誰が What何が Whyなぜ Howどのように物事の成り立ちや構成を理解するのに困難を抱える自閉症スペクトラムの児童にも有効。)

まとめ 今後の特別支援教育の課題

講演の終盤に「早期アセスメントが重要で、ウィスク検査などの検査を受け個別で支援が必要と判断された場合、環境を整えることが大事です。」とのお話しがありました。具体的な支援方法の知識と理解があれば、お互いスムーズにやり取りができ、トラブルが回避できる場合もあります。それぞれの特性を事前に知っておくことで準備することも可能です。

幼児期に発達障害と診断された場合は保育園、幼稚園、小学校ではそれぞれの支援は不可欠で、支援が必要な場合は保育園、幼稚園、小学校だけでなく療育センターや児童相談所も相談に乗ってくれます。

しかし、小・中学校においては、発達障害の専門分野に特化した児童心理士が教育機関(学校など)に常駐しているのが少ないのが現状です。学校教員がコーディネーターやカウンセラーとして兼任している場合が多いのではないでしょうか。

東京都では、特別支援教室が増加したこともあり発達障害の専門分野に特化した公認心理士(スクールカウンセラー)の育成にも力を入れているとのことですので、新支援体制に希望が持てそうです。

自治体単位で特別支援教育の体制がさまざまです。特性のある児童も、よりよい環境で教育が受けられるようになってほしいと思いますし、また周りの理解があれば温かい子育てができるようになると思います。早く標準モデルの特別支援教育の体制を確立をし、全国に採用してほしいと願っています。

葛飾区の特別支援教育の今 

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