児童虐待を撲滅する法改正等を求める意見書 趣旨説明(2019年3月8日)

2019年03月11日  公開

      議会報告

子どもたちの笑顔を守りたい。児童虐待を撲滅するために安藤じゅん子と立憲民主党は法改正が必要だと考えます

千葉県議会議員安藤じゅん子です。
3月8日、千葉県議会2月定例県議会の最終日に、立憲民主党は「児童虐待を撲滅する法改正等を求める意見書」を提出しました。安藤じゅん子は会派を代表して意見書の趣旨説明を行いました。自公などの反対で残念ながら不採択となりました。
以下に趣旨説明を掲載いたします。
(読みやすく少し直しています)

議案第14号「児童虐待を撲滅する法改正等を求める意見書」趣旨説明

野田市の小学4年生の女子児童が死亡し、両親が傷害容疑で逮捕されるという痛ましい事件が発生しました。
女子児童の度重なるSOSの発信にも関わらず、野田市教育委員会及び柏児童相談所の不適切な対応によって、今回の事件の発生を防ぐことができませんでした。

市教委は、秘密を守るとしたアンケートのコピーを虐待加害の父親に渡しました。
児相は、母親へのDV被害回復を確認せずに、女児の一時保護を解除する杜撰な判断をしました。そして、実父母宅復帰後、女児の安全確認を誰1人行わなかった連携不足、というよりはまさに関係者の無責任が、女児を見殺しにした事案であり、憤りを禁じえません。

子どもの利益を守り育てる観点から親権を適切に制限する民法820条の改正を行う

「第820条:親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」と書かれています。
これは権利が先に義務が後に記載されています。親権の権利が義務性に優先されると誤解され、これを楯に児童虐待の加害者は自分の罪を誤魔化し続けてきました。
平成24年に「子供の利益のために」という文言が追加されました。
しかし、立憲民主党会派は、『親権を行う者は、健全な養育など子の利益のために行使されるべき子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。』と、更に義務性を強調しもっと説明を入れるべきだと考えます。

懲戒を(体罰)を禁止するために、民法822条を削除する

「第822条:親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。」とあります。
これは親権者が子を虐待する際の正当化の理由に使用され、これにより児童相談所の介入等が躊躇されることにより、結果として子の利益や権利を重大に毀損される状況を招いていることは指摘するまでもありません。
子に対する必要なしつけは、民法第820条の監護教育権で行うことで足りています。

懲戒権は、監護権に含まれていると解釈される意見も多く、ことさら懲罰を強調する懲戒権を独立して規定する必要はないという事も多くの学会、識者から発言されています。
国際的にも懲戒規定は馴染まないものとなっており、各国において、懲戒規定は削除されています。子ども虐待の温床にもなっている懲戒権を削除しても、しつけ、子育て・教育のための法的根拠は、民法820条に定められているような親の養育の義務と権利で事足りていると考えます。

屈辱的な言動を含む、体罰を法律により明示的に禁止した国は、既に54カ国に上っています。
また、2010年6月、国連子どもの権利委員会は日本に対する総括所見のなかで、家庭における体罰及び児童の品位を下げるあらゆる形態の扱いを法律により明示的に禁止することを強く勧告するに至っており、懲戒権規定の削除がいっそう急務となっている現状だと思います。

このような世界潮流と、本事件の衝撃性から、今月5日、政府は、親が子どもを戒めることを認める民法の「懲戒権」について、児童虐待防止対策強化に向けた関連法案の改正から5年後をめどに、あり方を見直す考えを明らかにしました。

改正法案では体罰禁止も明文化し、具体的にどんな行為が「体罰」に当たるかを例示した指針を厚生労働省が策定し、また、改正法案の付則で、民法の懲戒権と、虐待を受けた子どもの意向を児相などの対応に反映させる「子どもの意見表明権」を保障する仕組みや、児相で相談・指導を担う児童福祉司らの国家資格化の検討についても、踏み込みました。

子どもたちが安全で健やかに成長する権利を守るのが大人の務め

子どもたちは健やかに、かつ、安全に成長する権利を有します。子どもが尊い人格を持った一人の人間として成長のあらゆる場面において尊重される社会の実現が強く求められています。
この頃、子どもたちが犯罪や事故の被害者になる事例が増えており、その中でも本来最も子どもを守るべき立場にある親による虐待の被害者となる子どもたちが増加をしています。

日本の実情は、「児童虐待」に対する防止、虐待された子どもの発見、保護の観点から立ち遅れた状況にあります。
身体的、性的、精神的虐待、保護・養育の拒否・怠慢などの「児童虐待」は家庭という閉鎖的な場所で行われる傾向が高く、多数の事例が児童相談所への通告もなくいわば闇に葬り去られている可能性も否定できません。

野田市女児虐待死亡事件後のマスコミ各社の取材によれば、近隣住民が女児に対する虐待を把握していたことを確認できます。すでに義務化されている児童虐待発見通告義務のさらなる周知は欠かせないと考えます。そして、こうした取り組みの強化により児童虐待の早期発見と介入につながることが期待できます。

児相は、介入時には、家族の再構築を急がずに被虐待児童やDV被害者の被害回復のためのニーズアセスメントを実施し、一方で、虐待加害親のカウンセリングや立ち直り支援をリスクマネジメントの観点から一体的に実施する必要があります。

彼女の死から四十九日を迎えようといういまなお、第三者検証委員会の検証とりまとめには至りませんが、児相ケース案件や不登校児童の安全確認の実施、安否確認のルール化が図られつつあることは、私たち一人一人を突き動かしている証左であると考えます。

児童虐待を撲滅すること、児童虐待を終わらせること、子どもの命を守るためことは我々の責務です。

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