「人に迷惑をかけない子? 」のポリシーってどうなの?
立石美津子の子育てアドバイス vol.04
2016年07月15日 公開
子育てポリシーに“人に迷惑をかけない子”と挙げるママがいます。でも、よく考えてみると“子どもは自己中心的で我儘で人に迷惑をかけながら生きていくもの”です。この本質を無視して親の方針が過度になると子どもが生きづらくなることがあるんですよ。
こんにちは。「1人でできる子になる『テキトー母さん流』子育てのコツ」の著者の立石美津子です。
「どんな風にお子さんが育ってほしいですか?」と質問すると…
“人に迷惑をかけない子”、 “どこへ出しても恥ずかしくない子”などの答えが返ってくることがあります。
でも、これらって裏っ返せば軸が他人にある“他人目線”。他人からどう評価されるかが最優先のポリシーのように私には聞こえてしまいます。また、これが度が過ぎると子ども自身が生きづらい人生を送ることにもなるかもしれません。
針が振れると生きづらくなる
耳に心地よいまっとうな方針も別の見方をすると、こんな風な子どもに育ってしまうリスクがあります。
- 人に迷惑をかけない子→困ったときに人に助けを求められない人
- どこへ出しても恥ずかしくない子→自分が他人からどう見られるかを最優先する人
- 我慢ができる子、弱音を吐かない子→「辛い、苦しい」と本心を言えない人
- 我儘を言わない子→自己主張しない人、他人の批判を気にして自分の意見を言わない人
乳幼児期にだけスポットライトを当てると一見いい子に見えることも、人の一生として長いスパンでとらえた場合、それがは弱点になってしまうこともあります。そして、これに縛られてしまい人として生き辛さを抱えていることもあります。何でも自分一人の力でやり遂げるように育てられた子どもは“人に頼ることは恥ずかしい”と思ってしまうかもしれません。
また、これらを強く刷り込まれた場合、自分に対してだけではなく他人に対して厳しくなるかもしれません。自分にはそれがどうしてもできないため、人に甘えられる人を許せなくなったり、泣き言を言って途中であきらめる人を認めることができなかったり……
そうなると他人との人間関係もギクシャクしてしまいますよね。
苛められる子
子ども社会の中でときには苛めが起こります。もし、友達からいじめられたときすぐに先生に言いつけに行ったり、親に苛められていることを訴えることが出来る子の場合は周りの大人もそのSOSで気づくことができます。
子どもの間でも「あいつに言うと大人にちくられる」となり、その後も苛めのターゲットになり続けることが少なくなるとも言われています。
けれども、親から“他人に頼ることや弱音を吐くことは悪いこと“とインプットされ過ぎている場合は自分で悩み、苦しみを抱え込んでしまうことがあります。そうなると「あいつにやっても他言しない」と思われ苛めがエスカレートしてしまいます。
訴えられない子どもの中には幼い頃から“我慢すること、弱音を吐かないことは美徳である”と教え込まれ「苛めを受けている自分をさらけだすことは恥ずかしいことだ」「親を落胆させてはならない、心配をかけてはならない」「親に迷惑をかける子どもであってはならない」と極端に思い込み親にも先生にも相談できずにいます。
もっと緩くしてみよう
我慢しなくてもいい、直ぐに泣き言を言ってもいいと言っている訳ではありません。あまりにも強くそれを押し付けない“さじ加減”が大事なのです。
「我慢できなかったら泣く」「努力しても頑張っても結果が伴わないことを悟る」「出来なかったら誰かの助けを借りる」こんな体験が精神的な強さを育てることになるのではないでしょうか。
ママ自身にも
子どもに完璧を求めるママの中には自分自身に対しても過度なハードルを課していることがあります。
例えば
- 栄養のバランスの取れた食事を毎日手作りしなくてはならない。レトルト食品を使ってはならない。
- なんでも手作りしなくてはならない。
- 子どもの喜ぶキャラ弁を作らなくてはならない。
- ママなんだから家庭の太陽になっていつも笑っていなくてはならない。
- 子どもの語彙を増やすため毎日最低3冊は絵本の読み聞かせをしなくてはならない。
- ママなんらからカラオケに行ったりお酒を飲んではいけない。
- ママなんだからママらしい服装をしなくてはならない。
- ママなんだから子育てを頑張らねばならない。
でも、自分のやりたいことを我慢したり、真の姿を出していないとどこかでプチンと切れてしまいます。完璧母さんにならないで、「私には無理です」と弱音を吐いたり、ときには誰かに頼ってみませんか。それで又、毎日の子育てを楽にできたら親も子どももハッピーになります。
そして、「子育て頑張ってくださいね」そんな言葉をかけられたり暑中見舞や年賀状に一筆添えられていても、これらを文字通りとらえ頑張りすぎないようにしましょう。
まとめ
その他、“我儘を言わない子”“嘘をつかない子”などの一見よい方針も子どもにとっては本音を言えずに辛いこともあります。子どもって自己中心的な生き物です。親に叱られたくなくてとっさに嘘をつくこともあります。良い方針も過度になると却って子どもが苦しくなることを頭の片隅に入れておきましょうね。
マンガ ©あべゆみこ
立石美津子(たていし みつこ)
子育て本著者、講演家。聖心女子大卒。幼稚園・小学校・特別支援学校教諭免許を取得後20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。自閉症児の母。著書は『1人でできる子になる テキトー母さん流 子育てのコツ』『はずれ先生にあたったとき読む本』『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』など多数