うちの子は怪しいかも…発達障害って決めつけないで

立石美津子の子育てアドバイス vol.02

2016年05月9日  公開

   立石美津子の子育てアドバイス 子育てコラム


集団行動がとれない、勉強が出来ない、授業中ウロウロ歩き回る、友達とうまく関われない。
こんな子どもはどこにでもいます。すると「個性の一つだ」と片付けてしまいたくなります。また「発達障害かもしれない」と不安になったりもします。こうして親として心が揺れ動きます。

発達障害の割合が高いと聞いて自己判断してしまう人

こんにちは。『1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ』の著者の立石美津子です。

6~10%、これは人口に占める発達障害の割合です。比較的高い確率ですね。子どもの中にもいますしクラスメートにもいます。大人になってこれがなくなる訳ではなく、あなた自身や夫がそうであったり、ママ友がそうである可能性もあるわけです。

そして、専門機関を受診することなく、正式な診断を受けていないで自己判断する人がいます。

「我が子は発達障害」「自分は発達障害」と割り切る人

隠れ蓑にしているケースです。
例えば・・・

病院の待合室で騒ぐ子ども
自分の子どもの躾ができていないことを棚に挙げて「うちの子は多動ちゃんだから許してね~」「うちの子は注意欠如/多動性障害だから」と開き直る。
学校の先生のケース
指導力がなくけじめをつけられないために学級崩壊しているクラス。それなのに「うちのクラスには発達障害の子どもが沢山いるからまとめられない」と自身を反省することなく子どものせいにしてぼやく教師。
相手に気遣いが出来ない、時間にルーズ、約束を守らないなどの態度の友人
自分の性格の範疇でだらしがないだけなのに「僕は発達障害だから」と開き直る人

「障害があるかもしれない」と不安になる人

また、反対に単なる性格の範囲なのに不安に駆られる人がいます。

お友達と一緒に何かをするよりも一人で遊んでいたいタイプで一人遊びが多い子
「うちの子は自閉症かもしれない」と不安になるママ。
保育参観にいったら椅子にじっと座っていられない我が子
元気で走り回っている我が子。お友達よりも好奇心旺盛で一つの事にじっと取り組むことができないだけなのに「“注意欠如/多動性障害(AD/HD)”かもしれない・・・」と不安になる。
忘れ物が多い、片付けられない。
単にだらしがないだけなのに「障害があるのかもしれない」思ってしまう。

周りの子どもと比べて「こういう子はうちだけではない。他にもたくさんいるじゃないか」不安を打ち消そうとしたり、また時間がたって心配になったり親自身が精神不安定になります。「○○癌の初期症状は○○である」と耳にすると、身体の症状を全部それに当てはめて不安になる人がいますが、これと似ていますね。

どこからが障害でどこからが個性か?

でも、こうなってしまうのは無理もないのです。

人の個性なんてグラデーションです。明るい人か暗い人かも「数値80以上は明るい人で数値40以下は暗い人です」というものはなく個々の感覚で相手を捉えて言っています。これと同じようなものなのです。

そして、実際に現代の医学では脳のMRI検査をして脳の画像で判断したり、採血して数値がはっきり出て「はい、あなたのお子さんは発達障害です」と判定できないのです。実に曖昧なもので境界線がはっきりしている訳ではありません。あくまでも行動を観察してそうかどうかを診断しているのが現状です。

発達障害とは

では、簡単に発達障害について基礎知識を入れていきましょう。

発達障害の種類

発達障害は大きく以下の3つに分類されます。

  • 1.学習障害(LD)
  • 2.注意欠如/多動性障害(AD/HD)
  • 3.広汎性発達障害(PDD)・・・広汎性発達障害は、自閉症やアスペルガー症候群、トゥレット症候群も含む。

知的には大きな遅れがないため、早期に気付くことが難しい“見えにくい障害”“グレーゾーンの子ども達”とも言われます。

障害の特徴

1.学習障害(LD)

よく喋り、友達関係も良好でクラスに人気者、社会性やコミュニケーション能力には全くは問題がないのにも関わらず、文字が読めません。目が見えない、弱視であるなどの視覚的なものが原因ではなく、脳の中で目で見た文字を音声化する箇所がうまく機能していません。「今日の給食はカレーライスだった」と元気に話はできても「きょうのきゅうしょくはかれーらいすだった」の文章を読むときたどたどしくなります。そもそも読めていないので“書く”ことにも困難を示します。

また算数が苦手になることもあります。小学2年生なのに1年生の2学期の単元「一ケタの繰り上り 9+3」が出来ないなど該当学年より1年半以上遅れており極端に出来ません。

この障害は勉強する場面で初めて気づかれるので幼児期にわかること少なく小学校になって診断されることが多いです。

2.注意欠如/多動性障害(AD/HD)

  • 直ぐに気が散る
  • 授業中立ち歩く
  • 席は離れなくても身体を常に揺する
  • 行動や感情を爆発させる
  • 片付けが出来ない
  • 忘れ物が多い
  • 約束や決まりごとを守れない

子どもはみんなこれに当てはまる気がしますが、AD/HDは5歳なのに2歳児のような行動をするなど極端に激しく、日常生活に支障をきたしています。小学生になると授業に集中できないため学力が低下します。

3. 広汎性発達障害(PDD)(=自閉症スペクトラム)

重度・中度・軽度があり、発達障害は軽度の自閉症に含まれます。
自閉症には様々なタイプがあるので一連を指して自閉症スペクトラム(連続体)という言い方もあります。最近よく耳にする“アスペルガー症候群”も含まれます。

社会性、言語・コミュ二ケーション、想像力がうまく育っていません。
実はコミュニケーションというのは、表面的な言葉のやりとりだけではなく親密度、視線、表情、身振り手振り、抑揚といった非言語的手段を多く使います。自閉症の人は相手の気持ちを察するのが苦手で、その場にふさわしい言葉や態度を選ぶことができないことがあります。

初対面の人に適切な挨拶ができず、昔からの親友のようにいきなり親しげに話しかけたり「太っていますね」「君は背が低いね」など思ったことをストレートに口にしてしまいます。また、言葉を話していてもよく分析してみると、相手とのキャッチボールの会話ではなく一方的だったりします。

また限定したものに強い興味を示したり、こだわりがあります。

  • スケジュールや場所にこだわる
  • 道順を変更できない
  • ルール違反を極端に嫌う
  • 一定のパターンに固執する

これが崩されると不安に自傷などを行いパニックに陥ります。

よくお喋りはするけれど文字が読めないLD児、多動で衝動的な行動をとってしまう注意欠如/多動性障害(AD/HD児)、コミュニケーションがうまく取れず友達関係がうまく作れないアスペルガー症候群や高機能自閉症などの広汎性発達障害の子ども達は、見た目には分かりづらく、先生にも親にも理解されにくいのです。

発達障害の原因

生まれつきの脳の機能障害です。原因ははっきりしていません。けれども、生まれてから後の親の育て方や家庭環境、躾の仕方が原因ではないことだけははっきりしています。
つまり

  • 愛情不足で自閉症になることはありません。
  • 躾をしていないために注意欠如/多動性障害になることはありません。
  • 本人の努力不足で学習障害児(LD)になることはありません。

また、これらを“病気”という人がいますが病気ではありません。病気と捉えてしまうと「治療により治る」と誤解が生まれます。

ただし、発達障害は早期発見、早期療育により状態が改善されることは大いにあります。けれども自閉症児はお爺さんお婆さんになっても自閉症のお爺さんお婆さん、学習障害児は老人になっても学習障害の老人なのです。

勇気を奮って専門機関を受診しよう

人間にはそれぞれ個性や性格があります。自閉症児であってもこだわりや行動は様々です。素人判断しないで勇気を奮って専門機関を受診しましょう。地域の自治体に相談すると適切な病院を紹介してくれます。悶悶と悩むより、白か黒かはっきりさせて前に進んでいきませんか。

親の価値観で育てると子どもは苦しい

もともと持って生まれた脳の特徴により生じている行動に対して、通常の価値観で「普通はこうするだろう」と枠をはめて育てると子どもがとても苦しみます。
例えば

  • 「幼稚園や保育園の行事である運動会や発表会は子どもにとっても楽しいイベントだ」と通常思いますが、普段と違う流れになる行事は発達障害児にとっては苦痛な空間そのものであったりすることもあります。場合によっては欠席させてもいいかもしれません。
  • 「お友達と一緒に遊ばないと楽しくないだろう」と無理に友達を作ることを強要されても当人にとってそれは一番避けたいことだったりします。地面の石ころを一列に並べることがこの上なく幸せに浸れる時間だったりします。
  • 「なんでもできるバランスのよい子ども」に育てたいと思っている親。けれども苦手を克服するように嫌なことをやらされて苦しくしんどい思いをしている子ども。自分が得意な分野に没頭していることが、この上なく楽しかったりするのです。

「この子のために良かれと思って」と我が子の幸せを一番に願ってやっていることが実は子どもを苦しめていることがあります。

人生は連続、しっぺ返しは後で来る

障害であろうと個性の範疇であろうと出来ないことばかりやらされて、責め立てられ親からも先生からも認められないで育つとどうなるでしょう。

「自分のことが好きではない」「生きていても価値がない」と思うようになります。これが毎日続き何年か経過した結果、思春期以降、引き籠ったり、他人に暴力を振るったり、自分を傷つける子どももいます。

こうなると個性だとか障害と分けることよりも、今、子どもがどのような状況に置かれて毎日生活しているのか、生き生きとした楽しい毎日を過ごせているかにスポットを当てて幸せな毎日を過ごさせることが優先なのではないでしょうか。

まとめ

アスペルガー症候群という言葉がこの世に出たのは2000年以降と言われています。情報があると何でも「発達障害だから」と決めつけたり、そうではないと思ったり振り回されます。
もし、「ひょっとしたら」と思うことがあるならば、勇気を奮って専門機関を訪ねてみませんか。

その上でもし“発達障害である”と言われたら子育てのスイッチのモードをそれに合わせたモードに切り替えましょう。診断を受けているのに「出来るだけ普通児に近づけたい」「みんなと同じように出来るようになってほしい」「人並みであってほしい」「お友達に出遅れてはいけない」と願い続けると子どもはいずれ潰れます。

親は健常者として生きてきたので「障害があることは不幸だ」という価値観にがんじがらめになっています。お母さん自身が健常者として普通に生きてきたから無理もないことですね。

でも、本人が毎日「生きていて幸せだなあ」と感じている繰り返しが幸せな未来を創るのではないでしょうか。「将来のために今、頑張らせる」そんなストイックな子育てちょっとやめてみませんか。

立石美津子(たていし みつこ)

子育て本著者、講演家。聖心女子大卒。幼稚園・小学校・特別支援学校教諭免許を取得後20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。自閉症児の母。著書は『1人でできる子になる テキトー母さん流 子育てのコツ』『はずれ先生にあたったとき読む本』『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』など多数

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