ママお仕事行かないで、保育園での上手な別れ方
立石美津子の子育てアドバイス vol.01
2016年04月22日 公開
新年度、職場復帰のためお子さんを保育園に預けるママも多いのではないでしょうか。そして毎朝、別れ際に園の玄関でギャン泣き。やっと慣れたと思ったらまた週末を迎え、月曜日はまた泣きます。どうやったら上手にお別れできるのでしょうか?
はじめまして。『1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ』の著者の立石美津子です。
このコラムでは、子育てでちょっとした壁にぶつかっている、ママやパパの気持ちが楽になるためのアドバイスを書いていこうと思います。たくさんの子どもたちを見てきた経験が、少しでも皆さんのお役に立てれば嬉しいです。
子どもを預けるとき、後ろ髪引かれませんか?
母親「宜しくお願い致します」
保育士「はい、お預かりします」
なんだか手荷物を預けるような会話。子どもは毎朝、家を出る時から泣いて嫌がり、保育園の玄関でもギャン泣きして、親は後ろ髪引かれながら会社に行く光景ってありますよね。
生まれたときからずっとママと一緒にいた環境からいきなり見知らぬ大人、多くの子ども達の中に放り込まれる子ども。泣くのは当然です。
「自分の仕事の都合で子どもをお荷物のように預け、置き去りにしてもいいのだろうか」と罪悪感に駆られ辛くなりよね。でも、できれば子どもに気持ちよく保育園に通ってほしいです。そんなとき上手なお別れの仕方があるんですよ。
NG態度あれこれ
×親が不安顔でいつまでもそこに留まっている
子どもが泣いていると気になってしまい親まで一緒になってグズグスと玄関にいると、保育士から「お母様、さっさとお仕事に行ってください!」とママまで叱られてしまうことがあります。
「まるで鬼のような保育士だ」と思ってしまいますよね。でも、鬼ではないのです。いつまでもそこに留まって、うろたえていて不安な顔を見せている親のどっちつかずの態度の方が子どもには酷なんです。
子どもにも以心伝心で、ますます不安定になってしまいます。そして「もっと泣き叫べばもしかしてママはお仕事を休んでくれるかもしれない」あるいは「お仕事辞めてくれるかもしれない」と勘違いしてしまうかもしれません。
仕事に復帰することを選んだのならば潔い態度を示しましょう。ずっと“罪悪感”に苛まれるのが嫌だったら、しばらく復帰するのを伸ばしたらどうでしょうか。
それから……
親の姿が見えなくなるとたいていは数分で諦め、他の子ども達が遊んでいる輪の中に入ってケロッとしているものですよ。
×泣いたことを叱る
「どうしてそんなに泣くの! 弱虫ね! 泣き虫ね!」と子どもの湧き起る感情を否定してはなりません。「お~お~悲しいね、泣いていいんだよ、もっともっと泣いていいんだよ」と寄り添ってやりましょう。「泣くな!」と言われたら感情の持って行き場がありませんからね。泣くことで気持ちのバランスをとっているのです。
×玩具に気をとられて後ろを向いているうちに逃げるように姿を消す
子どもが玩具や他の子どもに一瞬気をとられているうちに、黙って姿を消すのはよい方法ではありません。これは、やってはいけない最悪の別れ方です。
子どもが振り向いた時、そこにママの姿はありません。「僕が見ていない隙にいなくなっちゃった!」と、すっかり騙されたことに気付いて相当なショックを受けます。
子どもの目をきちんと見て、「ママは今からお仕事に行ってくるね。元気に遊んで過ごすのが○○ちゃんのお仕事だよ。5時には必ず迎えにくるからね」と、納得させましょう。
ただし、それを説明したからってすぐに泣きやむ聞きわけのよい子なんていません。しかし、泣きながら頭を整理整頓しているのです。
×連絡を入れないでお迎えの時刻に遅れる
「5時に必ず迎えに来るからね」と約束したのに、仕事が押して5時15分になってしまうことってよくありますよね。「たった15分だし、子どもは時計なんてわからないからまあいいかっ~」と思っていませんか?
子どもは5時になると迎えに来ると信じて待っています。時計が読めなくても、保育士がいそいそとかばんに汚れた着替えを詰めたり、連絡帳を書いたりする姿を見て、そろそろママが迎えに来ることを察知しています。
ところが、ママが約束通りに現れないと、子どもの不安感は一気にピークに達します。大人にとってはたった15分でも、子どもが不安な気持ちで過ごす15分は1時間くらい長く感じられます。
さらに、配慮の足りない保育士がうっかり、「ママ、遅いね」なんて口にしてしまうと、「もしかして永遠に迎えに来てくれないのかも」とすら思ってしまうものなのです。こうなると翌朝の別れ際、いつもより不安がいっぱいになり、もっと泣くことになります。
そうならないためにも、お迎えの時間が遅れる場合は、必ず園に連絡をして子どもにも伝えてもらいましょう。
泣く時間は必ず短くなってきます
それでも4月中はママとのお別れが辛くて泣いている子どもも多いです。でも必ず毎日、数分ずつ泣いている時間は確実に減っていきます。最初は30分も泣いていた子どもは翌日は25分、翌々日は20分、そうして4月末には別れ際に一瞬だけ「ワーッ」となったりします。
また、夕方、早めにお迎えに来た他の保護者の姿を見ると「ママに早く会いたいな」と思い出してしまい、また泣く子どももいます。すると、自分の親が迎えに来た途端、大泣きします。そんな姿を見て「朝、預けるときも泣いていた、迎えにきても泣いている。ひょっとして一日中泣いていたのではないか…」と勘違いしてしまいますが、そんなことはありませんよ。最初と終わりだけ泣いているだけです。
それから週末明けの月曜日の朝は他の曜日より泣きます。5月の5日連休明けも結構泣きます。お盆休み明けも泣きます。このことも頭の片隅に入れておいてくださいね。
泣くのは家庭がオアシスだから
集団生活の保育園ではおもちゃも自分の思い通りには使えず、口に合わないおやつや給食が出されることもあり、先生を一人占めすることもできない、何かと我慢を強いられます。トイレの仕様も布団だってなんだか家とは違います。だから「お家大好き」となり預けるとき泣きます。
反対に家庭で怒られてばかりいてくつろげないと感じ「保育園の方が天国!」と喜んでいる子の方がむしろ問題だったりします。実際。ママの前では緊張して“借りてきた猫”のように縮こまっているけれども、保育園では家庭でのストレスを放つように、友達に意地悪したり暴れているような子どもがいます。
反対に、保育園ではいい子なのに家ではわがまま放題の子。こちらの方がむしろ健全な家庭に育っているかもしれませんね。安心できる家庭で自己主張できているのですから心配はいりませんよ。
いつまでたっても泣いている場合は……
もし、6月になっても7月になってもずっと一日中泣いていて保育園に行くことをひどく嫌がっている場合は友達からの苛めだったり、先生の対応の悪さが原因だったりする場合もあります。その場合は一度面談を申し込んでみるとよいでしょう。
上手な別れ方をして、ママも気持ちよくお仕事に行きましょうね。
立石美津子(たていし みつこ)
子育て本著者、講演家。聖心女子大卒。幼稚園・小学校・特別支援学校教諭免許を取得後20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。自閉症児の母。著書は『1人でできる子になる テキトー母さん流 子育てのコツ』『はずれ先生にあたったとき読む本』『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』など多数