障害児を育てているママ友にかけない方がよい言葉

立石美津子の子育てアドバイス vol.21

2017年12月5日  公開

   立石美津子の子育てアドバイス 子育てコラム


障害のある子を育てているママに、健常の子どもを持つママがこう励ましました。「神様は育てられるママを選んで子どもを授けるのよ。○○ちゃんはあなたを選んで生まれてきたのよ」でも、言った側の自己満足に陥っている気がしてしまうのです。

果たして、言われた側はどう受け止めるでしょうか。「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」の著者の立石美津子がお話します。

最初から誰も好んで「障害を持つ子を産みたい」なんて思っていません。
そして実際にそれが自分の身に起こったとき、「これからどうやって育てて行けばいいんだ…どうして私にはこんな子が生まれてきたんだ」と周りを妬む気持ちさえ起こります。

そんなとき「子どもはお母さんを選んで生まれてくるんだよ~きちんと育てられる人のところに生まれてくるんだよ」と言われたら?

「そんな綺麗事を言われたくない!神様に選ばれたくなんかなかったのに!」と心で叫んでいるかもしれません。更に「責任を持って育てなさい」と責められている感じもします。

実際に“この世に生まれてくるかこないか”は子どもの選択ではありません。
“親を選んでやってくる”ことはありません。男女の営みをして妊娠したのは親の選択です。
だから障害児を生んだ親は「こんな子に産んでごめんね」と自分を責めたりします。

ママ友の心無い言葉

似たような例は他にもあります。

「くじ運が悪い!」と思ったことなんかしょっちゅうありました。特に子どもが小さい頃は“自閉症児の親として未熟”だったので苦しかったです。

こんなことがありました。

私は当時幼児教室を経営していました。私が教育関係の仕事をしていることを知っているママ友からこう言われました。

「やっぱり、子どもは親を選んで生まれてくるのね。立石さんを選んで△△君は生まれてきたのよ」と。ママ友仲間に栄養士の資格を持つ人がいました。その子どもがとても食欲旺盛な子どもでした。するとママ友は「□□君は料理上手のママを選んで生まれてきたのね」とも言っていました。

決して悪意はないんです。でも、栄養士のママと同列に並べるのは「ちょっと違うんでは?」と感じてしまいました。

こんな言葉が交わされる

「神様、一つだけ願いを叶えてくださるのならばこの子の寿命よりも一日長く私を生かしてください」と障害児を育てているお母さんが言います。つまり“親亡き後の子どもの行く末”を案じて「この子を残して逝けないから」と思うのです。

順番的にはそういう訳にはいかないのですが、つい、そう思ってしまうのです。

そんなとき「障害児の行く末を案じて無理心中」の事件がときどき起こります。
するとマスコミがこぞって「親のエゴだ!」とか「子どもには罪はないのにひどい親だ」と言う人がいますが、私はその親を非難する気持ちにはどうしてもなれないのです。

子どもの将来を悲観して無理心中を図ることはしてはならないことですが、少なくともそんな思いをしている人に「あなたを選んで生まれてきた」は言わないでほしいです。

どう言ってほしいか

ではどう言ってもらえると一番救われるでしょう。

それは
「大変そうだね…」

更に「私には、あなたの本当の大変さをわかることはできないけれども、何ができることがあったら言ってね」と言われたら嬉しいです。

それから、同じ障害を持つ子を育てている先輩ママから「頑張ってね」「応援しているから」と言われるのは励みになりますが、「健常児を羨ましい…」と思っているところへ、そのママ友からこれを言われるとひがんでしまい、器の狭い心境に陥ることもあります。

言った側と言われた側の気持ちのギャップ

鬱病を患っている人に「頑張って」「元気を出して」と言葉をかけてしまうと、「ああ、誰も自分の気持ちを理解してくれない。これ以上、どう頑張ればいいんだ。もう限界だ」と自殺の引き金になってしまうと言われています。これらは禁句です。

これと同じだと思うんです。

もし、周りにそんな人がいたら安易な励ましの言葉を出す前に、ちょっと考えてくださいね。


立石美津子(たていし みつこ)

子育て本著者、講演家。聖心女子大卒。幼稚園・小学校・特別支援学校教諭免許を取得後20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。自閉症児の母。著書は『1人でできる子になる テキトー母さん流 子育てのコツ』『はずれ先生にあたったとき読む本』『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』など多数

 立石美津子オフィシャルブログ

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