ピエロ・ヒーロー・ちいママ…アダルトチルドレンって?

立石美津子の子育てアドバイス vol.19

2017年10月9日  公開

   立石美津子の子育てアドバイス 子育てコラム


「ピエロ、ヒーロー、ダメな子、ちいママ、ロストワン」これは、アダルトチルドレンのタイプを表す言葉です。大人ではなく子どもの姿を表します。どんな子どもなのでしょうか?

“アダルトチルドレン”。直訳すれば「おとなこども」になりますが、“子どもらしくない子ども”という意味ではありません。手のかからないとても“良い子”だったりします。

子どもは親なしには生きていけない存在です。「いい子にしていなければ親に捨てられる」という感情を子どもに持たせてしまっている、つまり親の抑圧によるものだった場合、将来、いろいろな問題となって表れることがあります。

今日は『1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ』の著者の立石美津子がお話します。

元はアルコール依存症の親元で育った子が語源

アダルトチルドレン=(AC)とはアメリカのアルコール依存症の臨床の中から産まれた言葉で、“アルコール依存症の問題を抱えた家族の中で成人した大人、AdultChildren of Alcoholics”の訳です。

それが、次第にアルコール依存症などに限らずさまざまな問題がある家庭、つまり“機能不全家族”の中で育った子どもを指すように変わっていきました。そして、そんな家庭の中で育った子どもが大人になったとき、とても生きづらい人生を送ることになります。

代表的なのが虐待です。虐待の種類は身体的虐待、性的虐待、育児放棄、心理的虐待と4種ありますが、この中で言葉の暴力による虐待の場合、傍目からはわからず、子どもの心に深い傷となって残っていきます。

アダルト・チルドレンのタイプ

ピエロ

夫婦仲が悪い、険悪な嫁姑関係など殺伐した家庭で育つ子です。そんな中で何とか家族の人間関係を取り戻そうと、自ら面白い言動をして家族を笑わせることに必死です。本人は心から楽しんでいる訳ではありません。

【将来像】人当たりは大変良いのですが、心は孤独感で一杯です。

ヒーロー

成績抜群、スポーツ万能などすべてにおいて優秀な子。家族の期待を一身に背負って生きています。自分が完璧でいることで家族関係が保たれます。自分が頑張れば頑張るほど親が喜ぶことを知っています。

【将来像】世間体を非常に気にし、自分の気持ちよりも他人からの評価で動きます。ストイックに自分を追い込む苦しい人生を送ることもあります。

ダメな子

ヒーローとは真逆なタイプ。良いことで達成できないと正反対の行動で注目を引こうとします。人の物を盗んだり、「死ね」「バカ」など眉をしかめるような暴言を吐き、親をわざと困らせる行動をとります。悪いことをすればするほど親は“叱る”という形で自分に愛情をかけてくれることを知っている子です。

病気になると親が優しくなることを学習した子が、忙しくしている時に限って、実際に体調が悪くなり、熱を出すのも一つの例かもしれません。

【将来像】悪い行動と知りつつも、社会的によくない悪者を演じて皆の注目を浴びようします。

ちいママ

家事の手伝いをこなし、下の子の面倒をみるしっかり者の世話役。まるで“小さなママ”のように振る舞います。更に友達のようにパパの悪口の聞き役になるなど、母親のストレスを癒す役割と化します。「ママには私がついているから」と慰めたりもします。

【将来像】親も子どもを当てにし、子どもも親の世話をすることが自分の存在価値だと思うようになります。お互い“共依存関係(=母子カプセル)”となり、子離れ親離れができなくなります。

ロストワン

家族にいさかいがあっても黙っているタイプ。“手がかからない子”を演じることで、自分の存在がいないかのように振る舞う子。手がかからないことにより親から愛されようとします。

【将来像】大人になっても自分の意見を伝え、積極的にコミュニケーションをとることが苦手です。存在を忘れられているかのように振る舞うことで、立ち位置を確保しようとします。

子どもは「親に捨てられないように」頑張っている

子どもは自分の気持ちに反して、一生懸命、キャラクターを演じているのですね。

子どもは親の庇護なしには生きていくことができません。ですから本能的に親に見捨てられることのないように頑張っていい子になろうとします。一生懸命自分を守ってもらうために親にいろんな仮の姿をみせて必死なのです。

振り返り

こんな対応はどうでしょうか。

  • いい子にしていないと愛さない、いい子だったら愛するなどの条件付き愛のもとで育てている。
  • 子どもが悪いことをした時だけ感情に任せて叱り、良いことをしても無視する、褒めることが一切ない。
  • 親が子どもの世話をやくことだけが自分の存在価値になり、子どもをいつまでも赤ちゃん扱いする。親と子どもの共依存関係。
  • 子どもを支配する親。自分の思い通り行動しないとイラつく、何とかしてコントロールしようとする。
  • 子どもの思いを無視し、親の願いや期待を押し付ける。
  • 子どもがやりたいと思っていることをことごとく禁止し、話を一切聞いてやらない。
  • 「こんな悪いことをする子を産んだ覚えはない」と存在そのものを否定する。
  • 約束を守る、嘘は言わない、忘れ物はしないなど完璧を子どもに求める。「まあ、いいよ」はあり得ない、緊張感の張り詰めた家庭で育てる。

人生は生まれたときからの毎日の繰り返しです。今、目の前にいる我が子が支配によりアダルトチルドレンになってしまっていると、大人になったとき本人を苦しめるでしょう。

人間関係でつまずき、他人の間違いを絶対に許せなかったり、自分が100%できていないとゼロに等しいと感じる完璧主義者になってしまったり、常に人の目を気にして自分の感情を出せないでいたり、要求されるレベル以上のことをしてしまったり。なかなか幸せを感じることができません。

親は子どもの幸せを願って育てます。子どもも幸せになるためこの世に生まれてきました。子育てはしんどく辛いこともありますが、ちょっと振り返ってみてくださいね。


立石美津子(たていし みつこ)

子育て本著者、講演家。聖心女子大卒。幼稚園・小学校・特別支援学校教諭免許を取得後20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。自閉症児の母。著書は『1人でできる子になる テキトー母さん流 子育てのコツ』『はずれ先生にあたったとき読む本』『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』など多数

 立石美津子オフィシャルブログ

アーカイブ