幼稚園の玩具を勝手に持ち帰る子。でも親には嘘をつく。賢い対応
立石美津子の子育てアドバイス vol.18
2017年09月6日 公開
子どもの通園バックの中に幼稚園の玩具が入っていました。「それ、どうしたの?」と聞くと「先生に貸してもらったんだ」と答えました。けれども、それは嘘でした。園にある玩具が欲しくて、勝手に持ち帰ってきたものでした。どうしてこんな嘘をつくんでしょうか。
「また嘘ついている」「うちの子なんて年中嘘をついています」と言っているママは結構多いんですよ。
子どもは平気で嘘をつきます。「素直な子に育ってほしい」と思っているのに何だか悲しいですよね。そもそも、子どもはどうして嘘をつくんでしょうか。
今日は『1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ』の著者の立石美津子がお話します。
嘘をつく2つの理由
❶強い願望により、過去と現在の違いがわからなくなり妄想する。
願望が膨らんで、さも事実のように話すケースです。
私が保育園で働いていた頃の話です。週末明けの月曜日ある子どもが「昨日、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんとディズニーランドに行ったんだ」と言いました。これは真実でした。
ところが、私が「そうなの。それは良かったね」と返すと…。ディズニーランドに出かけていない他の子ども達も「僕も昨日、行ったよ」「私も行った」と嘘を言い始めました。
これは子どもには「自分が嘘をついている」という意識はこれぽっちもなく、「また行ってみたい」という強い思いにより、遠い昔のことが昨日のことにすり替えられ、こんな作り話になったのです。
❷叱られたくないから嘘をつく
怒られるのが嫌で嘘をつくケースです。
幼稚園の玩具を持ち帰ったことが親にばれた場面を想像し、前記のようにとっさに嘘をつきます。
ジュースをこぼしてしまったときも、過去にひどく叱られたことがフラッシュバックします。そして「なんでジュースぜこぼすの!」と問い詰められたとき、「最初からこぼれていたんだ」「弟がこぼした」とに言い訳してしまうのです。
親は見え透いた嘘だとわかるので、更に頭に血が上ってしまい、「どうして、そんな嘘をつくの!嘘つきは泥棒の始まりよ!」「そんな子に育てた覚えはない!」なんて更に追い打ちをかけるように叱ってしまうのです。
でも、こうなると子どもは逃げ場がなくなってしまい、悪循環です。
また、“嘘をつく”ということは、「相手がこれこれこういう風に反応するから、僕はこうしよう」と頭が回っている証拠でもあるのです。
どう対応したらよいのか
❶強い願望により、妄想した場合
「昨日、ディズニーランド行ったんだ」と言ったときは、「昨日、ディズニーランドなんか行っていないでしょ!そんな嘘をつくのではない!」と叱るのではなく、「そうなのね」と軽く交わしましょう。「それだけ、過去にお出かけが楽しかったんだ」と思ってあげましょう。
❷叱られるのが嫌で嘘をついたとき
ジュースをこぼしたときは頭ごなしに叱ってはなりません。ここで「どうしてこぼすの!」と理由追及しても、子どもには答えようがありません。
余計な仕事を増やされて、親は頭に血が上ってしまうかもしれませんが、その言葉は心の中で叫ぶだけにしましょう。
淡々と次のように言いましょう。
「あら、ジュースがこぼれているね。自分で拭いておいてね」
ここで親が拭いてはいけません。自分がやってしまった失敗については自己責任で自分で始末させるのです。これで、次からはこぼさないように気を付けるようになります。
❸幼稚園の玩具を勝手に持ち帰った
「ママに本当のことを言いなさい。先生たちは今頃、きっと『玩具がない』と探しているよ」と言いましょう。決して鬼ような形相で詰め寄ってはいけません。
「真実を話してほしい」と伝えるのです。
子どもが「勝手に持ってきてしまった」と正直に答えたら、「本当のことを話してくれてママは嬉しい。でも、幼稚園にある皆の玩具を勝手に持って帰ってくることは、絶対にしてはならないことなんだよ」と話しましょう。
わざとジュースをこぼす子
わざとこぼす子もいます。親を困らせるのが目的だからです。
なぜ、そんな行動に出るのでしょうか?それは、親の関心をあえて悪い行動をすることにより、引き留めたいからです。
例えば、ママが赤ちゃんの世話に追われ、パパママの関心が下の子に行ってしまっている状況だと、寂しい思いをしていたりします。
更に親に褒められようと良い子にしていても、褒める余裕が親側になく、無視されていたら、「良い行動をしていても、親の注意を引くことは出来ない、だったら悪い行動をして親の関心を引こう」と反対の作戦に出るのです。叱られてでもいいから自分に注目してほしいのです。
そんなときは負の行動である“ジュースをこぼした”ことについてあれこれ関わると、子どもの思う壺です。悪い行動は無視して、玩具を片づけた、手を洗ったなどの良い行動をうんと褒めてやってください。すると、“親を困らせることにより、関心を引こうとする行動”は消滅しますよ。
幼稚園、保育園で子どもの靴を隠す子
幼稚園、保育園でたまにあること。それは友達の靴を隠す子がいることです。
靴がなくなった子は「靴がない!」と大騒ぎします。先生も子ども達も一緒に探します。そして、(隠した子が)「僕見つけたよ」と差し出します。皆から「ありがとう」「○○君が探してくれた」とヒーローになれます。
つまり、普段、相手にされなくて寂しい思いをしているためについた嘘なのです。そのSOSを職員が受け止めることが大切ですね。
嘘をつく少年(狼少年)
イソップの有名な話に“嘘をつく子ども(狼少年)”の話があります。
あらすじです。
“羊飼いの少年が、退屈しのぎに「狼が出た!」と嘘をついて騒ぎを起こす。大人たちは騙される。その後も少年が繰り返し同じ嘘をついたので、本当に狼が現れた時には大人たちは信用せず、誰も助けに来なかった。そして、少年も羊も狼に食べられてしまった”
人は嘘をつき続けると、たまに本当のことを言っても信じてもらえなくなる。常日頃から正直に生活することで、必要な時に他人から信頼と助けを得ることができるという教訓話です。
子ども達に聞かせたい昔話ですが、ちょっと違う見方も出来ます。“少年は子どもでも羊飼いという仕事をさせられて寂しかったのかもしれない、親も仕事に忙しく構ってもらっていなかったのかもしれない、だから大人の気を引きたくて嘘をついたのかもしれない”
いたずらが止まない我が子、お母さんの気を引くための行為かもしれませんよ。
大人だって嘘をつくことはあります。生きていく上の術です。子ども社会にもあります。
嘘をつかなくてはならない状況になったから嘘をつきます。そうさせたのは、もしかして周りの大人のせいかもしれませんね。
立石美津子(たていし みつこ)
子育て本著者、講演家。聖心女子大卒。幼稚園・小学校・特別支援学校教諭免許を取得後20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。自閉症児の母。著書は『1人でできる子になる テキトー母さん流 子育てのコツ』『はずれ先生にあたったとき読む本』『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』など多数