便利過ぎる文明の利器、上手に使い分けしましょう(第2弾)
立石美津子の子育てアドバイス vol.15
2017年06月7日 公開
おしゃぶり、歩行器、自動で流れるトイレなど一見便利に見えるものも、顎や筋力の発達、トイレを使ったら流すなどの習慣が付かなくなるリスクもあります。今回は第2弾です。
人々の生活をより便利にするために色んな器具が開発されています。私達大人にはお助けグッズになるものも、まだ成長過程ある子どもには大切な経験の場を奪うこともあります。
そんな“便利だけれど避けたいグッズ”についての2回目を『一人でできる子になる テキトー母さん流 子育てのコツ』の著者の立石美津子がご紹介します。
第一弾はコチラ
便利な育児グッズ、家電は子どもにはどう?上手に使いましょう。(第1弾)
電動エンピツ削り
電動の鉛筆削りは勝手に削ってくれるので便利は便利ですが…子どもにはどうでしょう。今の時代まさか小刀で鉛筆を削る人はいませんが、ガリガリと取っ手を回して削るタイプや小さい鉛筆削りが幼いうちはよいかもしれません。
微妙な時間差で尖りすぎたり丸すぎたりする経験ができ、小刀ほどではありませんが手先が器用になりますよ。
電動歯ブラシ
最近、子ども用の電動歯ブラシも登場しています。
確かに綺麗にはなりますが、自分の歯を手先を微妙に動かして磨く練習が出来なくなります。歯磨きの仕方をマスターした大人には良いですが、子どものうちはこれに頼らない方がよいかもしれませんね。
ジェットタオル
誰が使うかわからない公共の場ではタオルは不衛生です。そのためジェットタオルが完備されている施設も多くなりました。
ただ、外出先にジェットタオルがあるのが当たり前の感覚になってしまうと、持ち物にハンカチを準備する習慣がなくなってしまいます。すると洋服で拭いてしまったり、パッパと水滴をその辺にまき散らしたり…将来、年頃になったとき女の子なのに服で手を拭いていたら、彼氏は興醒めしてしまいますよ。
それからトイレットぺーパーがすべて設置されている訳ではありません。ハンカチだけでなくポケットテッシュも携帯する習慣を付けさせましょう。
自動的に餌や水が出てくるペット用グッズ
長時間家を空けるときや一泊の旅行には便利ですが毎日使うのは?です。
子どもにペットの世話をさせることで、ただ可愛がるだけでなく便の始末や餌を与えることを通して学べることが多くあります。家にいるのに自動餌やり器にやらせていては“子どもにペットの世話をさせる意味”が半減してしまいますね。
お掃除ロボット
ボタン一つ押せば動いてくれるお掃除ロボットは便利です。床拭きタイプや窓ふきロボットまで登場しています。今の時代ほうきや塵取りを家の中で使うことはありませんが、子どもにお手伝いの習慣をつけさせるには、自動ロボットではない掃除機を使った方がいいかもしれませんね。
電子マネー
お財布携帯やスイカやパスモは小銭を用意する必要もなく、早く買うことが出来て便利です。でも、子どもに「数のお勉強をさせよう」と買い物体験をさせるときに電子マネーを使っては全く意味がありませんね。
自動販売機でウーロン茶を買う、駅ホームのキヨスクで物を購入するときはピッとカードをかざして済まさないで実物のお金を触らせましょう。
駅でママの切符を買うときも親がさっさと買ってしまうのではなく、子どもに投入口にコインを入れさせましょう。10円が15枚で150円、100円と50円で150円など大きな数の単位の実体験ができます。
スーパーマーケット
最近は商店街も減りスーパーで買い物を済ます人が多くなりました。肉や野菜などの食材、文房具、キッチン用品もすべて揃っています。いちいち色んな店に立ち寄る必要もなく時間短縮になります。
合計金額も一気にレジ係りの人が計算してくれます。
でも、商店街を歩けば肉は肉屋、魚は魚屋、野菜は八百屋と立ち寄り、お店の人と「今日はどんな魚が入っていますか」と会話することもできます。お金もその都度、財布から必要な額を出します。社会経験や数の体験が出来るのは商店街です。
普段はスーパーで済ましていても、時間がある週末の買い物は商店街まで出かけるのもよいですね。
計算機
子どもにはちょっとした計算は計算機を使わず、暗算させたり、紙上で計算させましょう。(計算力を育てるのには当たり前のことですが…)
時計
数字だけがついているデジタル時計は時間間隔が身に付きません。
“7:30”と書いてあり「7時30分だ」と子どもが言っても時間の意味はわかっておらず、ただ数字を読んでいるだけです。
これに対して針のついたアナログ時計ですと「8時まであと30分間ある」の時間間隔が目で見てわかります。
時計を読むことは単に数字を読み取ることではなく、自分で「あと10分で寝る時間だな」などの時間の流れがわかることです。
家庭では針のついたアナログ時計をぜひ置いてくださいね。
でも、壁にかけっぱなしだったり、棚に置いたままですと壁紙、置物と化してしまいます。「早くしなさい」と言う代わりに「あと10分で8時だからそろそろ寝る支度しようね」と時計を会話に入れることがポイントです。
体重計、体温計
時計だけでなく体重計も昔ながらの針が付いたもの、体温計は水銀のメモリが付いたものが良いです。時計と同じで数字だけを見るタイプですと重さや熱の高さなどの数量を実体験できないからです。
但し、このような古いタイプはだんだん少なくなってきています。でも、お店の片隅でまだ売られてはいますからぜひ、探してみてくださいね。
メール
年賀状も暑中見舞いもお礼状も何でもメールやラインで済ませる人が多くなってきました。こうなると段々、手で文字を書くことが億劫になってきます。
でも、子どもにはせめてお世話になっている習い事の先生、担任の先生に手書きの葉書を書かせましょう。字がまだ書けなくたって絵だけでもよいです。将来、筆不精になることはないでしょう。
パソコンで検索
地図で場所を調べる、交通手段を検索する、漢字を調べる、その他調べものをするときパソコン検索はスポット的に素早く目的のものを探すことが出来て便利です。
でも、子どもには紙の地図帳や図鑑を与えましょう。目的のものを探すのに時間はかかりますが、ペラペラめくっていくうちに「あれこんな虫もいるんだ」「東京ディズニーランドは東京都ではなく千葉県に位置するんだ」など目的以外のものも発見できます。興味関心が広がるきっかけにもなり知的好奇心に火が付きますよ。
漢字変換
スマホやパソコンの漢字変換があるので最近、紙状の辞書が置いてある家庭も少なくなってきました。携帯を使うと一気に文章の前後で自動的に判断して漢字変換してくれるので、調べる手間も省けて凄く便利ですよね。
けれども、子どもには漢和辞典や国語辞典を与えましょう。漢字や言葉の意味を調べるとき辞書を見れば別の漢字もたくさん目にすることできます。自分の調べたいもの以外の漢字の意味や使い方、字源にも触れることができ漢字力が高まります。
大人には便利な物でも子どもにはよくないものってたくさんあります。子育てでは合理性ばかり追わないようにしましょう。子どもは手間暇かかることをあえて経験することにより成長していきますから。
立石美津子(たていし みつこ)
子育て本著者、講演家。聖心女子大卒。幼稚園・小学校・特別支援学校教諭免許を取得後20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。自閉症児の母。著書は『1人でできる子になる テキトー母さん流 子育てのコツ』『はずれ先生にあたったとき読む本』『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』など多数