便利な育児グッズ、家電は子どもにはどう?上手に使いましょう。(第1弾)
立石美津子の子育てアドバイス vol.11
2017年02月7日 公開
我が家に遊びに来たママ友の子どもがトイレに行きました。後で入ってみるとドドーンと大便が・・・躾の出来ていない子ではありません。理由はその子の家のトイレが最新型の自動で流れるトイレだったからでした。
“諸刃の剣(もろはのつるぎ)”という言葉があります。“両辺に刃のついた剣は、相手を切ろうとして振り上げると、自分をも傷つける恐れがある”意味から“非常に役に立つが、使い方によりそうではなくなるもの”を指します。
便利な家電や育児グッズの中にもそんなものがあるように思います。
今日は“一人でできる子になる テキトー母さん流 子育てのコツ”の著者の立石美津子がお話します。
おしゃぶり
おしゃぶりは赤ちゃんが乳首を吸う感覚でいられるので精神的に安定します。だからぐずったり、泣き止まない時に使うととっても便利ですよね。電車やバスの中で泣いたときのお助けグッズになります。ママも育児ストレスから解放されることもあります。
更に次のメリットもあります。
- 指しゃぶりの防止
- 顎の発育促進
- 鼻呼吸の促進(口を押えるので鼻から息をする習慣がつく)
けれども、乳幼児期におしゃぶりの端な誤った使い方により、顎顔面変形・歯列変形・口唇変形・低位舌・咀嚼不全・発語構音不全などの症状が起こることがあります。おしゃぶり使用による誘発顎顔面変形症の言葉もあるくらいです。
こんな訴訟もありました。
おしゃぶり訴訟:コンビが和解 「影響を研究へ」
おしゃぶりの長期間使用で歯やあごに障害を生じたとして、横浜市の母子がベビー用品会社「コンビ」(東京都)に約900万円の賠償を求めた訴訟は21日、東京地裁(菅野雅之裁判長)で和解が成立した。和解条項でコンビは、おしゃぶりが歯やあごに与える影響を調査・研究し、安全性の高い製品提供などに努力するとした。和解金は公表されなかった。
訴えによると、長女(7)が生後2カ月から約3年半、同社発売のドイツ製おしゃぶりを1日12~15時間使用したところ、かみ合わせが悪くなり、歯にすき間ができた。母親らは「会社が長期間の使用を控える表示を怠った」と主張していた。【北村和巳】
(毎日新聞 2008年3月22日 東京朝刊)
受け皿つきエプロン
「手で食べないの!」「よそ見しないで!」「よく噛んで!」と叱ることが多くなってしまう食事時間。少しでも小言は減らしたいですよね。
子ともが小さいうちはまだまだ手先が器用に動かせないので、上手に食べることが出来ません。「零さないで」と叱るより、受け皿付きエプロンを使い“楽しい食事時間”を意識することはとても大切なことです。
©あべゆみこ
3歳過ぎたころからだんだんと手先が思うように動かせるようになり、0,1,2歳の頃よりも零すことも少なくなります。ところが、4歳になっても5歳になってもいつまでもこれを使っていると「零さないように気を付けなくても、このエプロンの受け皿があるから大丈夫」となってしまい、零さないで食べる習慣がなかなかつかなくなってしまうこともあります。
先割れスプーン
かつて学校給食で使われていた先割れスプーン。スプーンでありながらフォークの役割を果たす便利物でした。
けれども「箸の使い方を知らない子どもが増えた」の原因とされ、学校給食では廃止になりました。今は介護用や果物の種をとる専用のスプーンとして使われています。
家庭で使うとフォークとスプーン兼用で洗い物が少なくなって便利ですが、子どもにはよくないかもしれませんね。
スマホ
子どもがおとなしくなるからと、ぐずったら、即行、1歳の子にスマホを手渡したしたくなる気持ちもわかります。電車内で騒いだときなど一時的には役に立ちます。
けれども、家でも「これを渡しているとおとなしくするから」と一日中、しかも数年間に渡っていじらせた結果“ゲーム依存症”につながってしまうかもしれません。
その時になってメーカーを訴えるなんてことは出来ませんよね。使い方、与え方に気を付けましょう。
歩行器
今はあまり使っている人はいませんが、昔は子育て中の家庭でよく使われていました。子どもが伝い歩きの時期、転んで危ないから、ママが家事で忙しいとき一時的に使う場合もあります。
けれどもずっと子どもを歩行器の中に入れっぱなしですと、足の筋力が付くのが衰え歩くのが遅くなります。
人感センサー
一軒家のドアの外に設置された人感センサー。泥棒除けには効果抜群です。
家のトイレ、廊下、玄関に設置するといちいち電気を付けたり消したりする手間も省けます。更に電気の点けっぱなし防止になり電気代の節約にもなりますね。
けれども、これでは子どもに“点けたら消す”習慣がつかなくなります。家庭の中まで設置するのは止めた方がいいかもしれませんね。
自動で流れるトイレ
よその子が遊びに来ました。トイレを見たらドドーンと大きなうんこがそのまま便器にあります。「なんて躾の出来ていない子なんでしょう」と思いきや、その子の家のトイレは自動で洗浄するタイプだったので“自分で流す習慣”が付いていなかっただけなのでした。
自動洗浄ボタンだけ設定解除することも出来ますので、子どもが恥ずかしい思いをしないようにすべてを頼ることは止めたほうがいいかもしれませんね。
幼稚園、保育園、小学校にこれはついていることはありませんから「○○君のうんこだ~」とからかわれる原因になることもあります。
また、自宅で自動で蓋が開くトイレを使っていて、よそのお宅に行ってトイレに入って立ったまま蓋が開くのを待っていた子もいたと聞いたこともあります。
蛇口をひねると自動的に水が出てくる
公衆トイレの洗面台の蛇口、手を綺麗に洗った後、最後に蛇口を閉める行為はよく考えてみると不衛生ですよね。更に出しっぱなし防止、節水の意味もあり、デパートなどの公共施設で最近はよく設置されています。
でも、家に付けるのはどうでしょう。蛇口があることで“これくらいひねると少量出る、これくらいだと大量に出る“”お湯の温度差の加減をする“などの手先の感覚が発達します。
子どものために家に設置するのは避けた方がいいかもしれませんね。
お風呂の自動お湯はり機
最近はボタン一つで温度設定でき、お湯が溢れないように自動でお湯をはってくれるものも普及しています。
でも、これですと蛇口に手を近づけて「これだと熱過ぎるからもう少しぬるめに蛇口を水側に開けよう」とか「あと5分くらいで溢れるから水道を止めに行こう」とする必要はないわけです。ママには便利でも子どもの体験には却ってよくないかもしれませんね。
ゆっくり閉まるドア、ゆっくり閉じる便座
ある若い子がバンとドアを閉める癖が抜けず「お育ちが悪い」と後ろ指を指されていました。
その家庭では音を防止するため、全てのドアを“ゆっくり閉まるタイプ”に改造していました。力の入れ具合を経験できる場がなかったのですね。将来「お育ちが悪い」なんて勘違いされたら残念ですよね。
無洗米や自動泡立て器
お米を手で研いだリ、ケーキ作りで卵白を泡立てる泡立て器は手先の訓練にはもってこいです。
でも、無洗米や電動自動泡立て器ではそれが叶わないのです。子どもと料理をするときにはあえて楽にできるものに頼りすぎないほうが良いかもしれませんね。
便利ということは人間が楽できること、楽できるということは…考えなくてもよいということ。
最近の最新式トイレは掃除まで自動でやってくれるものもあり、家事で忙しいママにはとても助かるのですが、子どもはまだまだ色んな経験が必要なので便利物ばかり与えるのは避けた方がよいかもしれませんね。
立石美津子(たていし みつこ)
子育て本著者、講演家。聖心女子大卒。幼稚園・小学校・特別支援学校教諭免許を取得後20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。自閉症児の母。著書は『1人でできる子になる テキトー母さん流 子育てのコツ』『はずれ先生にあたったとき読む本』『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』など多数