消防職員採用に色覚検査は必要? 合理性のない色覚検査はやめるべき
平成29年9月定例県議会(本会議)一般質問の質問と答弁【その2】
2017年10月10日 公開
私、安藤じゅん子は、2017年9月27日の千葉県議会定例会の一般質問に登壇しました。
千葉県議会の一般質問は、質問者(議員)が質問項目すべてを一気に質問し、続いて担当部署ごとに答弁、その後質問者が再質問を行うという、一括質問の形式を採用しています。ホームページでは、各項目ごとに質問内容と、行政の答弁を分かりやすくまとめて掲載します。
一つ目の質問項目は、消防・防災についてです。
このページでは、そのうちの、(3)消防士の採用時における色覚検査についての質問とその答弁を掲載していきます。
消防士採用の色覚検査について
「救急現場で顔色で容態は判断しない」
「色覚異常があっても消防業務に支障はない」
2016年4月14日の読売新聞に「学校で13年ぶり色覚検査再開 異常知らず夢破れた悲劇、繰り返さぬよう」という記事が掲載されました。この記事を要約すると次の5点にまとめられます。
- 学校では希望者だけ色覚検査が行われるルールとなり、事実上は、ほとんど色覚検査が行われない実態となった。
- 自分が色覚異常であることを知らないで成長するひとが増加している。
- 一方で、一部の職種においては採用時に色覚検査を求めており、かつその結果が採用に影響している現状がある。
- その結果、採用時の段階で色覚を理由に門前払いにあうケースが増加している。
- このような背景をうけて、2016年4月に文科省は、プライバシーには極力注意しながらも、学校での色覚検査を原則再開する通知を出した。
私は、色覚によって就職制限を行っている業種が存在する以上、文科省の通知の通り、学校現場において、プライバシーに配慮しながらも色覚について自覚を持つ児童を増やす必要があると思います。
そもそも学校現場において色覚検査を実施しなければならない理由は、採用時に色覚検査を求めている一部の職種が存在するからです。もちろん、色覚異常があると支障をきたす業務もありますが、本当に合理的な理由で色覚検査を実施しているのか、チェックしていく必要もあるのではないかと思います。
このような背景から、全国の超党派の仲間、地方議員や市民・学生と協力してカラーユニバーサルデザイン推進議員ネットワークを立ち上げ、採用時に色覚検査を求めている職種について、本当に合理的な理由で色覚検査を実施しているのかチェックする取り組みをスタートさせました。
平成29年度における千葉県内の各自治体・一部事務組合が採用を行う消防職員について色覚検査を実施しているか調査をしたところ、31の自治体等のうち約6割の18消防が受験者に対し色覚障害を調べる色覚検査を求め、うち約8割に当たる14消防で検査結果が採用に影響していることが明らかになりました。
採用時の色覚検査について厚生労働省は平成13年に「色覚検査で異常とされても大半は支障なく業務が行える」ことから、雇い入れ時健診での色覚検査を廃止し、就職に際して根拠のない制限を行わないよう通達を出しています。
今回の調査によって、消防職員採用時において「色覚検査を求めていない」と回答した自治体は約42%を占め、かつその理由について「色覚異常があっても消防業務に支障がない」と回答していることから、色覚検査を実施する合理性・必要性が問われる結果となっています。
- 安藤じゅん子の質問
- 「各消防採用時における色覚検査の実施状況を県は把握していたのか? また、県内の一部の消防本部が消防採用時において、色覚検査を行っていることやその検査結果が採用に影響を及ぼしていることについて県の見解はどうか?」
- 答弁(横山正博防災危機管理部長)
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災害現場では炎や煙の色の変化などにより、瞬時に危険を察知する状況判断が必要となる場合がありる。
また、救急現場においても傷病者の顔色等を観察し、医師への伝達や応急処置を行うほか、トリアージタグや救急車内の各種モニター等、救急資機材の取扱いにおいても、色の識別が必要となることがある。このように、消防業務は業務の性格上、色覚による判断が求められる場面が多いものと考えている。
- 安藤じゅん子の質問
- 「消防業務の中で、色を見分ける必要がある業務についても、工夫することによって、色覚異常の人も仕事ができると県として考えているのか?」
- 答弁
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色覚については個人ごとに多様性があることから、職場において色覚異常のある方が、安全に働くことができるよう、その特性に応じたさまざまな配慮がなされることは重要であると考えている。
消防職員については、危険を伴う業務の特性を踏まえ、各消防本部において、色覚異常のある職員が業務を遂行するに当たり、具体的にどのような場面で支障が生じるのか、十分把握した上で対応することが重要であると考えている。
- 安藤じゅん子の再質問
- 「色覚を必要とする業務として県が例として挙げた業務について、県はどのような工夫ができると考えるのか?」
- 答弁
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色覚異常の方への配慮としては、一般的に、色による表示に文字や記号を加えることや、文字と背景の組合せの工夫などをすることが効果的とされている。
一方、現場における状況判断が求められる消防業務については、定型的な業務と異なり、色覚異常を補う業務上の工夫をノウハウとして整理するのは難しいといった側面がある。
消防における色覚異常の方に対する工夫については、各消防本部において、所掌する業務と職員の色覚の状況に応じ、個別に対応いただくことが重要であると考える。
- 安藤じゅん子の要望
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地方自治法第2条第5項において都道府県の役割として、広域調整の役割があると明記されている。また、県の消防課のホームページにおいても自ら市町村における消防の指導に関することが仕事の一つであると記載されている。県が主体的に県内消防本部における就職時の色覚検査の実態調査や色覚検査のあり方を示すべきであると要望する。
また、火炎の色に関しては、環境の変化によって色弱でない方でも正確な色を判断することは現場において極めて困難であることもあり、複数人で火炎を判断するなどの対応をするべきである。
救急現場でも傷病者の顔色については、先般、医師と意見交換したところ、患者さんの容態を判断する際、“歩行が可能であるか”、“意識レベルはどうか”、“負傷はあるか”、“呼吸はあるか”、“呼吸数はどのくらいか”などで判断するとのこと。顔色を見て容態を判断するというのは考えにくいという意見だった。
さらに、医師は色弱でもなれるのに、救急現場では色弱だと問題があるのかわからないといった声も頂戴した。複数でチームとして対応すれば問題ないのではないか。使用する資機材については記号や印などの情報を付加するカラーユニバーサルデザインなどの工夫で、色弱の人でも仕事ができるものであると強く指摘をさせていただく。
根拠のない合理性のない色覚検査はやめるべきだと指摘したい。