子どもに「綺麗な字」を書かせるには?

塾講師Naoの"子どもの力をぐんぐん伸ばすコツ" vol.4

2016年08月12日  公開

   塾講師Naoの“子どもの力をぐんぐん伸ばすコツ” 子育てコラム


特に男のお子さんをもつお母さんが抱くことの多い悩みの一つに「子どもの文字の汚さ」があります。
「もっと丁寧に書きなさい!」「どうしてちゃんと書けないの?」とついつい感情をぶつけてしまいますよね。しかし、お母さんの心配や焦りとは裏腹に、「面倒くさいからヤダ」「これでいいだもん!」と全く丁寧に書こうとしない子ども・・・。

“綺麗な字を書かせるには、どうしたらいいの?”

お母さんが子どもにすべき「字の教育」について考えてみましょう。

なぜ子どもに「綺麗な字」を書いてほしいのか?

どうして子どもに「もっとちゃんと書きなさい!」と怒鳴ってしまうのでしょうか。

  • 計算ミスや誤読、見直しができない(自分が書いた文章を読み返すことができない)ことを防ぐため
  • 試験などでの“書いたつもりなのに失点”を防ぐため
  • 他人に宛てた文章で意味が伝わらないと困るから
  • 字の汚さで信頼を失ってほしくないから

“誰も読めない字”では受け取った相手が困りますし、試験などで失点の対象となります。後で復習できるようにとノートに残しておいた文章が読み返せなければ、メモとしての機能も果たせません。
「綺麗な字を書きなさい」というメッセージには、お母さんの「より快適に、効果的に学べるようになってほしい」「他人から認められる人に育ってほしい」という想いが込められています。

「綺麗な字」とは?

それでは、子どもに書いてほしい「綺麗な字」とは、一体どんな字でしょうか。
お子さんの状況によって、また、お母さんの想うお子さんの理想の姿によって異なるところですね。

  • “読める”字である
  • 「とめ・はね・はらい」が正しい
  • 枠の中の“文字のバランス”が整っている
  • 時間をかけて丁寧に書き、文字からその人の品格が感じられる
  • 書道を極めた美文字

「そもそも、誰が読んでもこれじゃ読めないじゃない」と“読める”字を求めているかもしれませんし、「もう少しはねやはらいをはっきり、丁寧に書ければいいな」と願っているかもしれません。また、「最低限のレベルはクリアできているから、もっと高みを目指してほしい」という場合もあるでしょう。

子どもに変化や成長を求めるときに重要なことは、「どんなふうに」「どうやって」変わって欲しいのかを具体的に伝えること。「もっと綺麗に!」ではどうしたら良いのか分かりませんが、「しっかりハネよう」と伝えれば、ハネを意識して書けるようになります。

まずは、お母さん自身が「どうして」「どのように」変わって欲しいと思っているのかを明確にしましょう。お母さんの子を想う気持ちが伝わり、具体的にどのようにすればより良くなるかが分かれば、子どもも実践しやすくなります。

字の綺麗さにこだわりすぎることもまた問題に

字の綺麗さにこだわる前に、一度考えておいてほしいことがあります。それは、 “文字が汚い方が、試験での成績が良い”ケースがあるということ。

“誰からも気持ち良く読んでもらえる綺麗な字”を書くことができる子でも、字を丁寧に書きすぎるがために制限時間内に問題を解くことができなかったり、板書を写すのについていけなかったり、字を書くことばかりに集中して学習内容が頭に入らなかったりする場合があります。これに対し、「他人に向けた文章を書くときはいつもより丁寧に書くけれども、自分用のメモは自分が読めればいい」と意識している子は、殴り書きをする場面と丁寧に書く場面を使い分け、思考や作業の時間をたっぷりとります。後者の子の方が後々能力を大きく伸ばすことは言わずもがな、ですよね。

つまり、「子どもがどうして今汚い字を書いたのか」を知り、認めることも大切。「これは自分用のメモだからいいんだもん」は、その通りなのです。

より丁寧に、正しく書くために

もちろん、「必要なときには字を丁寧に、正しく書くことができる」力は、どの子にとっても必要な力です。ここが欠けている場合には、お母さんからのアドバイスや指導が必要でしょう。そんな場合は、次のように“伝え方”を工夫してみてください。

「何を、どう変えるべきか」を伝える

「もっとちゃんと書きなさい」「綺麗に書きなさい」では、お母さんが想う“綺麗な字”は伝わりません。はねやはらいができていないのか、いつも枠からはみ出しているから少し小さく書く必要があるのか、筆圧が低すぎて読みにくいから少し濃く書くべきなのか・・・「どこをどう変えたら、より綺麗な字になるのか」をアドバイスしてあげましょう。

特に、友だちの書く字などに興味がなく、他人の文字を意識して観察していない子どもには「◯◯ちゃん(くん)のように綺麗に書きなさい」などと比べても、綺麗な字の書き方に気づけません。「僕(私)は綺麗に書く力がないんだ・・・」と自信を失ったり、「どうせ無理だから、いいんだ!」と向上心を持てなくなったりしてしまいます。

書いて嬉しい、もらって嬉しい体験を

自分のメモは“読める字”で書ける場合、丁寧な字を求められる場面の多くは“他人に読ませる文字”の場合ですよね。
文字はコミュニケーション手段。人が書く文字は、意味内容だけでなく相手に雰囲気や誠意をも伝えます。

そこで大切なのは誰かに当てて、真心を込めて手紙を書く体験や、「丁寧に書いてもらったメッセージをもらうことは嬉しい」という経験を豊富に積むこと。「うわぁ、見て!◯◯さんが心のこもった手紙を書いてくれたよ。嬉しいね〜!」「お母さんのために一生懸命書いてくれたこの字、嬉しいな。ありがとう!」などの会話を増やしてみてはいかがでしょうか。

必ず「認める」

少しでも“よく書けている”字を見つけたら、すかさず「この字、しっかりはねているね」「この文、とっても読みやすいな」などと認めてあげましょう。子どもは嬉しさを手掛かりに「丁寧に書くとこんなに気持ちいいんだ」「こういう文字が綺麗な字なんだな」と知り、意識して書くようになります。

最後に

「もっと丁寧に書けないのかしら・・・」のイライラをぶつける前に、ちょっと立ち止まって考えてみましょう。「求めているのはどんな文字で、本当に子どもに必要なものなのか」そして、「どうしたら理想の文字が書けるようになるのか」を。丁寧に書く方法や嬉しさを知った子どもは、意識して書こうと思い、行動できるようになっていきます。


Nao Kiyota

塾講師ライター。子どもたちがもっと夢中で学べるよう、日々格闘中。美容・健康分野でも執筆活動をしている。

保有資格等
教育系:小学校免許/特別支援学校免許/IEEC TEACHER TRAINING CENTER AND OXFORD UNIVERSITY PRESS Teacher Training Program 2013
心理系:メンタル心理カウンセラー/上級心理カウンセラー
健康系:ダイエットアドバイザー/リンパケアセラピスト

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